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  • 2018.01.06

恋と愛と性を結婚相手ひとりに求めるのは無理なことだったのか?

2007年春、湘南へと引越した大泉りかさん。海辺での素敵な同棲生活が始まり、二転三転しながらも結婚式と入籍の予定が立ったころ、2人の目の前には「セックスレス」というひとつの問題が立ちはだかっていました。

ようやく具体化した結婚の話

うつむいて物思いにふける女性の画像
by Allef Vinicius

 先週書いたとおり、2007年の春、わたしは恋人とともに湘南へと引っ越しました。JR藤沢駅から江ノ電に乗って2駅目。片瀬海岸からは歩いて20分くらいの2LDKのテラスハウスで、家賃は12万円でした。地方都市の割に家賃は高めですが、わたしが都内で住んでいたマンションは11万円だったので、二人で家賃を折半することを考えると、生活費に余裕が出来る計算でした。

 その頃、わたしは編集部への常勤をやめて、書き物の仕事だけで生活が出来るようになりたいと考えていました。だから、引っ越しをきっかけに、平日週5日通っていた編集部での仕事を週2~3日に変えてもらいました。そうして出来た余力で、ライターの仕事を増やそうという目論見です。

 ゆとりある働き方に変えたついでに、せっかく海の側に引っ越したのだからと、恋人に釣りを教えてもらったり、ボードを買ってサーフィンを始めたりしました。週の半分は東京に出て仕事をし、残りの半分は海辺で過ごすというスタイルは、理想的な“素敵な生活”だと思いました。

 一緒に住んだことで、期限を過ぎていた結婚の話もようやく少しだけ具体化しました。もともと、結婚を前提に同棲の話をしていたので、引っ越しの荷物が片付いた頃に、具体的に時期を決めようということになったのです。

 彼は「籍を入れるだけでいいよね」と提案してきました。「散々これまで自分でイベントを開いて、主人公気分を味わったんだから、もう気が済んでるでしょ」というのが彼の言い分でした。でもわたしは、出来ればドレスを着たいし、ホテルでの披露宴までは望まないにしても、友人たちとパーティーしたいと考えていました。

 他方で、パーティーを開くとなるとそれはそれで面倒くさい、という気持ちもたしかにあったので、「彼がしたくないならそれでいいや」と納得しました。だというのに、両親に電話で報告したところ、父が「結婚式をしないと入籍は認めない」と主張するのです。「それならするか」と彼も意見を翻し、そんな二転三転の末、翌年の5月に式とお披露目パーティーを開き、入籍しようと予定したのでした。

結婚とセックスを天秤にかけて

 着々と結婚へと話が進んでいく一方で、わたしたちは問題をひとつ抱えていました。それはセックスレスです。わたしはセックスがしたかったけれど、いつも彼に、「忙しい」とか、「いまはその気になれない」といった理由で断られていたのです。

 もちろん不満だったので、なんとか解決しようと努力をしました。けれど、話し合いは拒否され、怒っても泣いてもあやふやに誤魔化される日々をくりかえすうちに、だんだんと諦めの気持ちが大きくなってきました。

 そして考えたのです。結婚が、ともに暮らしともに生きる“家族”を作ることであるなら、セックスは必ずしもなくてもいい。そもそも、恋と愛と性をすべて満たしてもらうことを、ひとりの相手に求めることのほうが無理なことではないかと。

 こうして考えると、この頃のわたしは“結婚”に取り憑かれていたように思います。同級生たちは次々と結婚していくし、親と話すたびに「結婚はどうするの?」と尋ねられる。そういう場所にいたせいで、付き合っている相手がいてかつ適齢期なのだから、結婚するのは当然なのだと信じ込んでいました。セックスよりも、結婚のほうが大切だと思ったのです。

 それに最悪の場合は、セックスだけを「外注する」という選択肢だってないわけじゃない。実際に少なくない人々が、そうやって結婚生活と自分の性欲を両立させているのです。だったらわたしも、彼・彼女らにならってそうすればいいと考えたのでした。

――次週へ続く


Text/大泉りか

次回は<結婚を前提にしていたはずの空白の同棲期間、わたしは何をしていたのだろう>です。
「2年経ったら結婚しよう」という約束だったのに、2年半経ってようやく結婚を前提に同棲。しかもそれから1年もの間、結婚の話はない。そんな空白の同棲期間は、大泉さんにとっても記憶に残らない日々だったようです。

ライタープロフィール

大泉りか
キャバ嬢、SMショーのM女、ボディペインティングのモデルなどの経歴を経て、現在は官能小説家、ライトノベル作家。
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