恋と愛と性を結婚相手ひとりに求めるのは無理なことだったのか?

ようやく具体化した結婚の話

うつむいて物思いにふける女性の画像 Allef Vinicius

前回書いたとおり、2007年の春、わたしは恋人とともに湘南へと引っ越しました。JR藤沢駅から江ノ電に乗って2駅目。片瀬海岸からは歩いて20分くらいの2LDKのテラスハウスで、家賃は12万円でした。地方都市の割に家賃は高めですが、わたしが都内で住んでいたマンションは11万円だったので、二人で家賃を折半することを考えると、生活費に余裕が出来る計算でした。

その頃、わたしは編集部への常勤をやめて、書き物の仕事だけで生活が出来るようになりたいと考えていました。だから、引っ越しをきっかけに、平日週5日通っていた編集部での仕事を週2~3日に変えてもらいました。そうして出来た余力で、ライターの仕事を増やそうという目論見です。

ゆとりある働き方に変えたついでに、せっかく海の側に引っ越したのだからと、恋人に釣りを教えてもらったり、ボードを買ってサーフィンを始めたりしました。週の半分は東京に出て仕事をし、残りの半分は海辺で過ごすというスタイルは、理想的な“素敵な生活”だと思いました。

一緒に住んだことで、期限を過ぎていた結婚の話もようやく少しだけ具体化しました。もともと、結婚を前提に同棲の話をしていたので、引っ越しの荷物が片付いた頃に、具体的に時期を決めようということになったのです。

彼は「籍を入れるだけでいいよね」と提案してきました。「散々これまで自分でイベントを開いて、主人公気分を味わったんだから、もう気が済んでるでしょ」というのが彼の言い分でした。でもわたしは、出来ればドレスを着たいし、ホテルでの披露宴までは望まないにしても、友人たちとパーティーしたいと考えていました。

他方で、パーティーを開くとなるとそれはそれで面倒くさい、という気持ちもたしかにあったので、「彼がしたくないならそれでいいや」と納得しました。だというのに、両親に電話で報告したところ、父が「結婚式をしないと入籍は認めない」と主張するのです。「それならするか」と彼も意見を翻し、そんな二転三転の末、翌年の5月に式とお披露目パーティーを開き、入籍しようと予定したのでした。