どれだけやっても自分を好きになれない

アル:私の周りには、たまたまシングルマザーになった女性は結構いるけど、Kちゃんみたいな確信的シングルマザーはいないのよ。最初からひとりで産み育てるとなると「やっぱり勇気がない、不安だ」という人が多い。

K:私の場合、やっぱり医者という職業は大きかったと思う。

アル:手に職があるから食いっぱぐれないし、どこでも生きていけるもんね。

K:あとわりとフレキシブルに働き方も選べるし、最悪バイトだけでも食べてはいけるから、経済的な不安はなかった。

アル:でもさ、経済的な不安がなくても、いざ実行するか?となるとできないって人が多いよ。やっぱり「本気でほしかった」からじゃない?「子どもおったらええな」ぐらいやと頑張れへんやん?

K:そうね。私の場合「このまま平均寿命まで生きるのか」と考えたら、うんざりして死にたくなったのよ。

アル:え、そんなに?

K:なんせ自分が嫌いだからさ。「私は空っぽ、何もない」みたいな。
自分をクズだと思ってるからクズの男をつかむけど、そんなクズでもいないと自分をさらにクズだと思ってしまう。

アル:そうか~。はたから見たら優秀なお医者さんでさ、クズどころかスゴイよねって立場だけど、他者評価と自己肯定は別物だもんね。自分で自分を嫌いなのは最大の地獄だよね。

K:そう、中身は闇だらけよ。はたからはキャリアに邁進してるように見えただろうけど、医者になってもキャリアアップしても「これじゃない感」は消えなかった。
結局どれだけやっても、どこまでいっても自分を好きになれないってわかったから。

アル:Kちゃんは明るいし友達も多いし多趣味だし、楽しそうに生きてるように見えるけど、心には闇があったんだな。

K:それはアルも同じだったでしょ?

アル:うん。TOFUFUの『私がペーパーウェイトを手に入れるまで』にも書いたけど、私も普段は明るく強気だけど、たまに闇落ちすると「男にモノのように扱われたい」という思いがあふれて、自傷行為のようなセックスを繰り返していた。

他人からは「いろいろ持ってるやん自分」と思われても「違う、そうじゃない」がつねに鳴り響いていたから。他人に評価されることと、自分に生きる価値があると思えるかとは、全然違うよね。

K:それが旦那さんと出会って変わったんだよね?

アル:旦那に出会って、自分を傷つけなくても生きていけるようになった。男女だから別れるかもしれないし、死別するかもしれないけど、一番ほしかったものが満たされたから「もう大丈夫、ひとりでも生きていける」と思えた。

K:私もそう。子どもという何よりも大切な存在ができて、その存在が自分を慕ってくれて、もうそれだけでオッケー。私がほしかったものはこれだった!って。

アル:川崎貴子さんも「子どもを産んだ瞬間、私に必要だったのはこれだった!とスーッと収まった」「問答無用で自己肯定できた」という話をされていたよ。

K:そうそう!私もスーッと満たされたから、もう他には何もいらない。恋愛も男もいらないし、世間や他人の評価もいらない。「子どもに望むことはある?」とか聞かれるけど、それもない。ただ生きててくれたらいい。

アル:おお~。

K:べつにグレだっていいよ。「クソババア、金よこせ!」って言われてもいい(笑)。

アル:最近の子ども凶暴じゃないから、積み木を崩さないらしいよ(笑)。
「ただ生きててくれたらいい」と無条件に愛される実感は、自分たちが子ども時代に得られなかったものだよね。

K:うん。生きてるのが辛かったから、やりたいことは全部やってみたけど、自分を嫌いなのは治らないし、生きづらさも変わらなくて…それは明らかに父親が原因だった。

――次回、毒親トークに花を咲かせます!

<女三代だめんず家系、父親はクズの三冠王!/確信的シングルマザーの選択②>
「子どものために離婚しない」よく聞く言葉ですが、本当に子どものためになっているのでしょうか。生活面の不安はあるかもしれませんが、離婚しないデメリットもあるのかもしれません。次回はAM読者の皆さんにも知って欲しい「シングルマザー」のお話です。