我慢が前提の関係性と話し合いができることは別

さて、彼への恋愛感情が失われた理由として、彼の何気ない言動によって傷ついたり、マナー違反に対する指摘を何度も繰り返していくうちに徐々に……ということだと受け止めました。
その過程を経ても、あなたは「年に数回のことを乗り越えられれば」と期待する気持ちがあるようです。
年に数回、ということは1年に5~6回。2ヶ月に1回も嫌な気分になる出来事が待ち構えているって、かなりの頻度ではないでしょうか。
相手の言動で直してほしい部分があるときに「これは嫌だな」「もっとこうしてほしいな」と伝えるのはとてもいいことだとは思います。
ですが、「そのときだけ我慢すればいい」という考えはいかがなものかな、と。だって、我慢が前提という関係性自体がそもそも変ではないでしょうか。
「この人とだったら何があっても乗り越えられる、きちんと対話ができる人だ」という心持ちで一緒に生きていく覚悟を決め、いざというときに話し合いをして乗り越えていくこと。「こういう嫌な部分があるから、それが発出されたときは都度話し合わなくちゃな……」と常に警戒心を持った状態で共に過ごすこと。この2つはまったくの別物です。

どうしたって、一緒に過ごす時間が長くなればなるほど慣れと面倒くささが生まれてきます。
結婚となるとこの先何十年と一緒に過ごすわけで、その中で仕事の忙しい時期があったり、子供を持つことを考えたら子育てに忙殺されたり、どちらかの親が体調を崩したりなどもあるでしょう。また、それだけじゃなく生活の細々とした雑事をこなしていくうちに、いちいち指摘することにエネルギーを避けなくなってしまうもの。
生活が破綻しかねないほど重要な問題であれば話し合いをする必要はありますが、ある程度許容できる部分は、つい見逃してしまうようになるでしょう。

ただでさえ生活を共にすることで目に付くことはお互いに出てきますし、生活スタイルの変化や加齢によっていい風にも悪い風にも人は変わっていきます。
悩み事は絶対に新しく生まれていきますから、それを解消する過程は避けられないのに、ハナから乗り越えるポイントがわかりきった状態で結婚生活をスタートさせてしまうと、しんどさも面倒くささも倍増するのではないかと思います。
現時点ですでに彼に言えていない不満が溜まっているようですが、それらはこれから減っていくと期待するのではなく、増えていくのだと心づもりしておくことをおすすめします。
「今はまだ我慢できるから」「これさえ乗り越えれば大丈夫だから」とざっくりとした見通しで済ませるのではなく、長期的目線で想像することが今のあなたに必要な作業ではないでしょうか。

不満は価値観の違いではなく
人間性なのかもしれない

彼への不満として、例を2つ挙げてくださっています。
あなたはそれらについて「これって普通なんでしょうか?」と仰っていますが、「それは普通のことだよ」と返されたら納得できるのでしょうか。
というか、彼の感覚が普通かどうかなんてどうだっていいんですよ。重要なのは、あなたがそれを言われてどう思ったかではありませんか?

1つ目に挙げてくださった彼の試し行動に関しては、過去にご自身の気持ちを伝えて、すっきり解決……とまではいかないにしても、その後同じような言動がなければ改善されたんだな、と一旦終わったこととして捉えているように読み取りました。ですが、終わったこととはいえあなたの中では「彼はわたしを試すような人なんだな」という認識は残ったままなのではないかな、と。

2つ目の「もしも妊娠時に胎児に障がいがあることがわかったら~」という仮定でのやりとりについてはまだ解決していないことですし、また「彼はそういう考えの人なのか」という認識もしたのでしょう。これについては、将来子供を持ちたいと考えているのならなあなあにしたまま過ごしていい部分ではないはずです。
わたしには子供がおらず、妊娠の経験も子育ての経験もないため想像の範疇を超えないのですが、どの意見が正しいとは簡単に言いきれないテーマだと思います。
妊娠は女性にしかできないことですから、男性が「もし自分が妊娠したら」と想像してもその配慮は不十分であることが多いでしょうし、授かった命を大事にしたいという考えはとてもわかる反面、障害のある子供を産み育てることの大変さは無視できるものではない。
きっとそのことはあなたも十二分に理解していて、彼には寄り添って同じ目線、同じ熱量で一緒に悩んでくれる人であってほしかった、というのが真意ではないでしょうか。
あなたが「彼とは価値観の違いがある」と形容しているのはその通りなんですが、2つ目の例について、彼にはあなたが求めていることの発想自体がそもそもなさそうで、価値観というより人間性の部分なのかな、と感じました。

連絡の頻度や家事・生活費の比重など、目に見えやすい価値観については話し合いで擦り合わせすることも可能なんですが、その人の人間性の部分に改善を求めて応えてもらうのってとても難しいことなんですよね。
そもそも理解してもらうこと自体容易ではなく、時間もかかれば労力もかかる、なんならまったく変化がない可能性だって大いにあるのです。こういった大変さは、好きだからこそ頑張れる側面があるのだと思います。
彼のことが大好きだから絶対に乗り越えてやる! という気持ちがあるなら「大変そうだけど頑張れ!」と背中を押しますが、あなたの場合どうやらそうではなさそうです。

条件を重要視して、利害関係が一致たうえで結婚することが悪いわけではありませんよ。
そういう結婚のかたちを望み、幸せを見出している人もいます。
でも、わたしにはあなたがそういうタイプには見えないんですよね。
「お互い大好きで、互いのために努力できて切磋琢磨できるような関係がいい」「ドキドキもときめきもほしい」など、相談文に理想の恋愛観を書かれているところから、そう感じられます。
ドキドキやときめきを求めている人がそういったものがない状態でお付き合いをして結婚して……って、だんだんと不満が募っていくのではないでしょうか。「年齢的に落ち着いた恋愛を求めたほうがいい」という意見もそう。落ち着いた恋愛はしたい人がすればいいだけのことですし、何歳になったってドキドキハラハラを求めた恋愛をしたっていい。
「こうしたほうがいい」と不確定な恋愛基準を自分で設定している部分からも、恋愛というものにわりと自分なりの理想を持っているように感じました。
もちろん安定した職や計画性は魅力的だと思います。
ですが、それはあくまでも後押しや安心材料のひとつに過ぎず、自分の本心を無視してまで決め手にするようなものではないはずです。
「これまで彼ほど長く付き合った人がいない~」と交際期間の長さを判断材料のひとつにしていますが、それは何かの基準になるものではありませんし、していいものでもありません。
「こういう恋愛をしたい」という理想があり、ときめきやドキドキなど感情に重きを置いているあなたが、それらを無視して「結局こういうのが幸せになれるんだろうな」と半ば諦め気味に条件を優先して結婚生活を送っても、そこに幸せを見出せないままなのではないかな、と思いました。