「私なんて」の精神と、他人任せが奪うもの

さて、ご自身でも形容されているように、わたしも相談文を読んで「ずいぶん自信がないんだなぁ」と感じたのですが、その原因はどこにあるのでしょうか。
もしかしたら彼に嘘をつかれたことが原因のひとつかな、とも思ったのですが、彼があなたに嘘をついて元彼女を優先したのはあなたに魅力がないからだとか、あなたに比べて元彼女のほうが素敵な人だからとかではありませんからね。
ただ単に彼が保身のために嘘をついた、という事実が存在するだけです。その事実と自己否定を結び付けてはいけませんよ。

言葉にはされていませんが、あなたからは「私なんて」の精神が透けて見えます。
あのね、もっと強気で、毅然とした態度を取っていいんですよ。
彼との別れを考える理由として「自信のなさと向き合う必要がなくなるから」と書かれていますが、それはまったくもって理由になっていません。
自分にとってメリットがない、むしろデメリットのほうが大きいと思えばさっさと手を引いて環境を変えるという選択も間違ってはいませんし、場合によってはそちらを推奨しますが、あなたは今ここで向き合っておかないとあとからそのツケがまわってくるように感じます。
即時的には楽になれるのかもしれませんが、一度自分をしっかり救って肯定しておかないと自信は失われたままですし、「あのとき頑張れなかった」という事実だけが心に残り、長い時間尾を引いて取り返しにくくなってしまいます。

全体を通して、あなたは他人のせいにしていいはずのところで自分を責めて、自分で決めるべき部分で他力本願になっている印象を受けました。
「彼の前で泣いたり不機嫌になる自分が嫌だから(彼のことが嫌いになったわけじゃないけれど)別れたい」だなんて思う必要はありません。「お前がわたしをそうさせたんだろうが!!!!!」と思っていいのです。
わざわざそれを言葉にして彼にぶつける必要はありませんが、そういう心持ちでいたっていい。だって、事実なんですから。

「私なんて」の精神でいると、他者から消費され、その事実に気づけなくなり、自分の選択に自信が持てなくなるだけでなく、自分の本音すらもわからなくなるせいで判断力が鈍って、軽んじていい人間だと相手に認識されたまま抜け出せなくなってしまうのです。

いつまで経っても同じことで彼を責め続けてしまうのなら健全な精神状態でなくなりますし、それこそ自分自身のために離れたほうがいいとは思いますが、わたしがあなたの立場で付き合い続けると決めたのなら「こーんなにいい女を傷つけやがって! それを受け止めてやれるわたしはなんて寛大なんだ。見てろよ、このわたしがよりよい関係を築いてやるからな! 許しはしないけれど、今後に期待してやっからよ!」というメンタルにするでしょう。
たとえ虚勢を張っているだけだろうが、無理矢理に自分に言い聞かせているだけだろうが、中身はあとから伴ってくるものですよ。

自分の本心を最優先に決断を

最後に、「私はどうすればいいでしょうか」とのことですが……自分のしたいようにしましょう、と言うほかありません。

彼が元彼女と友好関係を続けるから、ほんとうはしたくないけれど自分も当てつけのような行動を取った(そこから自分の心情を察してほしい)。
彼は素敵な人だから自分と別れても他に恋人ができるだろうけれど、自分は彼と別れたらこんなにいい人とはもう出会えないかもしれない(だから一人きりになるのがこわい)。
このままだと彼に愛想を尽かされるかもしれないけれど、いっそのことそうしてほしい(自分で決断できないから)。

カッコ内の言葉はあくまでも「こういう本音が隠れているのではないかな」というわたしの推察に過ぎませんが、あなたの言葉は決断を自分以外の他者もしくは自然発生的な現象に委ねていますし、自分の選択が間違っていたと思いたくないから他の存在に責任転嫁しているように思えてなりません。

そもそも、別れたあとに彼に新しい彼女ができたってどうでもいいじゃないですか。それは「別れたいけれど、別れない」という選択の理由にはなり得ないでしょう。
また、彼と別れたらこんなにいい人と出会えないかも……という不安だって、もちろん絶対に素敵な人と出会えるという保障はありませんが、つらい気持ちを抱えたまま付き合い続けるのと、一人きりで楽しくハッピーな日々を過ごすのとでは、前者のほうが人生もったいないと思いませんか?

もちろん、自分が幸せになるための想像をしてみてよりよい選択をしていきたい、という考えは間違ってはいません。でも、将来的には最善手だと現時点で思える選択を優先していくことは、自分の本心に耳を傾けてそれに従って行動することに比べたら、大した価値のあるものではない。
「一人きりになるのがこわいから、もう素敵な彼氏ができないかもしれないから」という理由で不確定な未来を案じ、本心ではないのに「きっとこっちのほうが傷つかないだろう」と自分の人生の決断を他者に委ねるのではなく、「誰になんと言われようと彼のことが大好きだから!」と付き合い続けるか、もしくは「もう無理! だって楽しくないんだもん!」と彼と別れるか、自分の本心を最優先に決断したほうが、ずっとずっと幸せになれるはずです。

あなたは、自分の人生を他人任せにすることがどんなに恐ろしいことなのか、認識しておいたほうがいい。
誰かになんとかしてもらおうとせず、こわくても、しんどくても、自分に自信がなくても、歯を食いしばって、しっかり両脚で地面を踏みしめて、拳で心臓をバンバン叩いて、自分自身のために、沸いた怒りと襲ってくるかなしみをなかったことにしないでください。

Text/ものすごい愛
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