「アンタ、けっこういい男ね」バイトでエロい団地妻に誘われた話/中川淳一郎

なぜか「団地妻」という言葉にはエロい雰囲気が漂うが、僕はそんなエロい団地妻に会ったことがある。国勢調査のバイトでの出来事だ。今は総務省の管轄だが、当時は総務庁が管轄していた。東京・恵比寿の調査会社が総務庁の下請けとして調査員確保と集計を委託された。僕はバイト情報誌を読み「国勢調査 調査員募集」の文字に「えっ? これってバイトがやっていたのか?」と驚いた。

報酬はハッキリとは覚えていないのだが、とあるエリアの40軒ほどのお宅を訪れ、回答票を渡し、回収できたら一軒2000円とかそういったものだったと記憶している。恵比寿の調査会社で40部の調査票をもらい、締切日までに回収できた調査票を渡すというものだった。闇雲に行くのではなく、すでに「この家へ行け」という指示が出ていた。調査員が勝手に架空の回答をすることを避けるためだろう。

希望エリアについては大学がある東京都小平市にした。ここであれば、大学の講義終了後に最短ルートで40軒回り、帰りも同じルートで不在だった家庭に行くことができる。19時ぐらいであれば家に帰っているかもしれないし、そこまで遅くないため失礼でもないだろう。

そんなこんなで自転車を走らせ調査会社の男の指示通り「総務庁の方から来ました! 国勢調査のお願いです!」と言った。一応僕も総務庁から委託された「准公務員」的立場である。断られることもあったが、たいていは「あらあら」などと言われ、解説をし、少し雑談をしてから回収日をその場で決め、配布できたことのチェックと回収日を表に記入する。

サプライズで憧れの女性と再会

こうして何軒か行った後にサプライズがあった。「山森」という珍しい苗字で、小平市の某町だった。僕が中学校に行っていた頃は、生徒・教員全員の住所・電話番号が書かれた名簿が配られていて、山森先生の自宅が某町であることを知っていたので「もしかしたら……」という期待があったのだ。山森先生は僕らが入学したときは2年目の23歳で、美人だと評判で生徒からは人気があった。

呼び鈴を鳴らすと出てきたのは山森先生だった! 

「えっ? ニノミヤ君?」

「もしかして山森先生ですか? 中2のときの担任だった」

「そうよそうよ! うわー、久しぶり! 5年ぶりね! 今何やってるの?」

かくして僕らはしばらく雑談をした後、当然のごとく調査票に記入してもらうことは約束できた。今回のエロの相手は彼女ではない。さすがにそんなに都合の良い話はない。山森先生はすでに結婚しており、そのときは休暇を取っており、里帰り出産をしていたというのだ。 そしてそこから僕は自転車のペダルを漕ぎ、さらに進み団地へ。