そんなに都合の良い話はない?

呼び鈴を鳴らすと、出てきたのは、いわゆる「スリップ」とか「シミーズ」のような下着風のトップスを身につけ、短パンをはいた20代後半と見られる女性だった。ひっつめ髪で化粧っ気はなかったがかなりの美人だし、胸の谷間はバッチリと見えた。彼女を見た瞬間、僕は一気に興奮してしまった。

「えぇ? 国勢調査。分かった、協力するわ。でさぁ、アンタ、けっこういい男ね。ちょっと話聞いてくれる?」

彼女はそう言い、僕は玄関に腰を降ろし、彼女の胸の谷間を時々チラチラと眺めながら彼女の話を聞いた。聞くところによると彼女は見立て通り28歳で、既婚者だという。しかし、夫がトラックの長距離ドライバーだとのことで家にあまりいない。

「あのさぁ、家にほとんどいないし、朝の3時に帰ってきたかと思ったら、6時にもう出ていくの。アレ、絶対に女のところに行ってると思うの」

そう言うと、いかに彼が自分のことを大事にしていないかをまくしたて、こう言った。

「あのさ、ニノミヤさん、アンタね、私、今、ここでセックスしてもいいのよ。どう、家に上がってこない?」

世論調査票バイトは定時があるわけでもなんでもないため、このまま彼女の家に上がって行為に及んでも問題はないのだが、問題は突然夫が帰ってきてしまうことである。これまでの彼女の話を聞くと、彼の帰宅時刻は不定期で予想がつかないのだという。僕は彼女を自転車の後部席に乗せて二人乗りで3kmほど離れたラブホテルへ行こうかとも思ったが、その姿を彼に見られたらやはりヤバい。

団地妻の誘いに…

そこで「〇〇さん、ちょっと今は落ち着いてください! また夫さんへの不満があったら僕が回収するときに教えてください。そしてそのとき、一発ヤる日を決めましょう!」と伝えた。

これに彼女も納得してくれ、いざ当日がやってきた。彼女はシミーズ姿ではなく、きちんとおしゃれをしていた。そして後ろからはガタイの良い爽やかな短髪男性が。彼女は「おつかれさまー!」と言い、彼は「ちゃんと書いておきましたよー!」と言った。調査票を受け取った後、彼が部屋に行ったら彼女はヒソヒソと僕にこう言った。

「あの日ね、すぐに彼帰ってきたの。だから私たちヤらなくて良かった。しかもね、あの日は3回イケたのよ!」

なんのこっちゃない。ただのノロケだ。しかし、あのとき彼女の寝室に入らないで本当に良かった。

Text/中川淳一郎