食文化は文化人類学

もう1つ、落ち込んでいる私が最近凝っているのが「食」。といっても、私は正直にいうと美味しいものにあまり興味がないし、手先が不器用なので料理がそんなに好きではない。ではどうやって「食」に凝っているのかというと、食べることそのものというより、食材の歴史を調べたりするのにハマっているのである。

たとえば、『世界史を大きく動かした植物(稲垣栄洋・PHP研究所)』。コムギ、コショウ、トウモロコシなどが人類の歴史にどのような影響を及ぼしてきたかを知ると、ただのインスタントのコンポタがまるで奇跡の一匙のように思えてくる。

そして、『くさいはうまい(小泉武夫・角川ソフィア文庫)』にあるような発酵食品。動物の胃袋にミルクを入れて持ち運んでいたらミスって腐らせてしまったのがチーズの始まりだというけど、発酵食品のことを調べていると、納豆1パックを前にしているだけでとても不思議な気持ちになってくる。

さらに、家のなかから脱出すべく旅と絡めながら世界の食文化を深掘りしたいという人がいたら、おすすめなのが『ひと皿の記憶(四方田犬彦・ちくま文庫)』。家から一歩も出なくても、これを読んでいる間は長い旅をしているような気分に浸れる。こんな状況下で紹介することになるとは思っていなかったけど、私が昔からたびたび読み返している大切な1冊だ。

住空間を快適にしたり、食卓を彩ったりするだけでも素晴らしい。だけど、その背景に何があるのかまで考えると、私の場合は退屈が紛れ、脳が生き返るような気がする。AMなので、本当はもっと恋愛や女性の生き方などについても書きたいのだけど……昨今の社会情勢のなかでは、「恋愛」「女性」といった区分にとらわれず、「人間」としてどう生きるべきかを、やっぱり考えてしまう私なのであった。

初の書籍化!

チェコ好き(和田 真里奈) さんの連載が書籍化されました!
『寂しくもないし、孤独でもないけれど、じゃあこの心のモヤモヤは何だと言うのか -女の人生をナナメ上から見つめるブックガイド-』は、書き下ろしも収録されて読み応えたっぷり。なんだかちょっともやっとする…そんなときのヒントがきっとあるはすです。