社会は変わっているのに恋愛でリードする役割は男のまま?『男がつらいよ』を女が読む

このコラムを連載していると、実は私、かなり時代の恩恵を受けている人間なんじゃ? と感じることがたくさんある。

どういうことかというと……30代後半で、特に美人でもなく、たいした収入もキャリアもないくせに独身、子供はなし、趣味は二次創作と海外旅行(男性に嫌われる要素しかない)、おまけにコミュニケーション能力が低く場を盛り上げるのが下手でお酒がまったく飲めない私は、15年くらい前なら全方向からフルボッコにされる人権なし女だったはずだからである。しかし2024年の現在、少なくとも人権はあると感じるし、毎日おおむね楽しい。生きづらさを感じることがないわけではないけど、自分の将来に対して希望のようなものも持てている。これはひとえに(たぶん多くはフェミニストの)諸先輩方が、結婚や出産に限らない自分の好きなこと、やりたいことを主軸に人生を選んでもいいことを、長く主張し続けてきてくれたおかげだろう。

さらにテクノロジーの進化や社会変化に伴って、在宅勤務が可能になり対面で話すのと同じくらいテキストコミュニケーションが重要視されるようになったこと(オタクだから話すのは苦手だけど、書くのはまあまあ得意なのだ)、お酒を無理やり飲ませる文化が廃れたことなども、私にとってはプラスに働いた。ここ15年くらいの価値観の変化って、私のような人間にとってはかなり都合のいいものだったんじゃないかという気がするのである。

しかし、物事にはだいたい裏と表がある。私のような人間がいい思いをした反面で、自分の居場所がじわじわと侵食されていくような居心地の悪さを味わっている人も、おそらくはいたのだろう。田中俊之さんの『男がつらいよ 絶望の時代の希望の男性学』を読んで、なんとなくそんなことを考えた。

時代が変わってもリードするのは男性のまま

『男がつらいよ』は、男性特有の生きづらさや、それに対処する方法について書かれている「男性学」の本である。この15年間くらいの社会変化の恩恵をかなり受けている私のような属性の人間がいる一方で、本書を読む限りでは、男性はそれほどこの恩恵を受けられていないみたいだ。

たとえば、SNSでは定期的に「奢り・奢られ論争」が荒れる。日本はずっと不景気だし、同世代の男女ならまあ割り勘でいいんじゃないかなと私は20代前半のときからずっと思っているが、世間はどうやらそうでもないらしい。独身時代はお金を払うのもリードするのも男性で、結婚してからは年収を上げ続けることに加え、家事や育児も妻と同等以上にできなければならない。本書によると、このようなプレッシャーに耐えられず、生きづらさを感じている男性は少なくないとのこと。