多くの男性は弱さを告白しづらい

本書を読んで感じたのは、男性学はまだ途上である、ということだ。男として生きていて何がつらいか、世間にどう変わってほしいか、おそらくはまだそれらを言語化している途中なのだろう。ただ個人的には、そういった弱さを告白することを嫌う「ウィークネス・フォビア」を内包している男性が少なくないと感じる。これは男性への批判ではなく、私自身にそういうところがあるから気持ちがわかるのだ。フェミニズムは弱さの告白と連帯から始まっているところがあるけれど、もしかすると、男性学が同じ手法で発展していくのは難しいのかもしれない……とちょっと思ってしまった。

男性が生きづらさを語る機会が増えたらいい

本書の中で「なるほど」と思ったのは、シングルが地域の子育てサポートなどに参加してもいいのでは、という提案である。確かに、これは私も「人手が必要」と言われたらぜんぜんやる気がある。しかし「育児の経験がない人に子供を任せるのは不安」と思う人もいるだろうし、児童への性加害のことなんかを考えると、実現はなかなか難しいだろうなと思う。

というわけで、問題は山積みだ。著者の田中さんは、本書で「(男性が)競争を降りることには恐怖が伴う」と言う。仕事上の経験や業績以外で男性を評価する軸がほぼない今の状態で、自分の感じている生きづらさや怖さを言葉にするのは、確かにとても難しいことだろう。

それでも、15年かけて社会が少しずつ変わってきたように、これから先の15年は、男性が(女性に鬱憤をぶつけるのではなく)自分の言葉で生きづらさについて語る機会が増えたらいい。『男がつらいよ』、女性もぜひ読んでみるといいのではないでしょうか。

Text/チェコ好き(和田真里奈)