お金を出して買っている本当のもの

本当に大切な人との思い出は、たとえ訪れたのが素敵な場所でなくても、食べたのが美味しい料理ではなくても、幸福な記憶として残る。
私も、かつての恋人(今は親友)と食べ放題のランチに行ったとき、お互いに食が細いのでまったく元が取れないわ、お腹は気持ち悪くなるわで、最悪だったことがある。だけど、2人してゲッソリして帰ったその日のことは、なぜか思い出すと幸せな気持ちになる。
そうなると、私があの日払った食べ放題ランチの代金は、はたして何に払ったお金だったのか。

そういうわけで、『しあわせのねだん』は日々の浪費を反省したり、将来を見据えてお金の使い方を考えたりするためのエッセイではない。より本質的な部分で、自分は何にお金を使っているのか、何が欲しいのか。それを振り返るきっかけをくれる本なのである。

衝動買いをほとんどしない私は、きっと、直感や一瞬の胸のときめきに、お金を払えていないのだろう。確かに衝動買いばかりしていては問題だが(それはそれで直感が誤作動しているということだ)、やっぱり、しなさすぎも問題だ。

4月に行った南米でも、やっぱり自分へのお土産を買わずに帰ってきてしまった。来年こそは、旅で衝動買いをするぞ! と意気込んでいる私だけど、意気込んでいる時点で、もはや衝動買いではなくなっている。まだまだ精進あるのみだ。