イケてるやつほど地元を出ない?出自や世代について話したくなる『私がオバサンになったよ』

地元の女

3年前、高校時代の友人の結婚式に出席した。表参道が会場だったその式で、私は高校時代の旧友たちと久々の再会を果たしたわけだけど、私が仲が良かったのはその日の主役である、新婦ただ1人のみ。しかし、新婦はお色直しに親への手紙の朗読にケーキ入刀にと忙しいのが常なので、一参列者の私と雑談している暇はない。つまり、私は全然仲が良くなくぶっちゃけ名前すらうろ覚えの旧友たちと世間話をしなくてはいけない時間を過ごすはめになったわけだけど、みんな、こういう結婚式のときどうしてるの?

……と、結婚式嫌いの私が結婚式の愚痴を言い出すとキリがないので(一応言い訳しておくと、私が嫌いなのはあくまで「結婚式」という場であり、友人のことは大切に思っている!)話を進めよう。
その結婚式に私と同じく参列していた、旧友Mちゃん。高校時代はサッカー部のマネージャーとしてモテまくり、容姿も可愛らしく、少女漫画なら主役を張れる華があった子だ。そのMちゃんが、結婚式終わりに、「表参道駅ってどっち?」と私に聞いてきたことが、なんだか妙な思い出として残っている。

「東京なんかめったに来ないから」と、Mちゃんは笑った。高校時代、明らかに私なんかよりイケていて華もあったMちゃんに、「表参道駅はあっちだよ」と説明しているのが、少しショックでもあった。まあ、東京の地理にちょっと詳しいくらいで「今は私のほうがイケてる」なんて勘違いをするほど私もバカじゃないが、もうMちゃんと私はまったく別の世界を生きているのだ、というのが身に染みてしまったのである。

イケてるやつは地元に残る説

そんなことを思い出しながら読んだのが、ジェーン・スーさんの『私がオバさんになったよ』だ。この本では、ジェーン・スーさんが光浦靖子さん、山内マリコさん、中野信子さん、田中俊之さん、海野つなみさん、宇多丸さん、酒井順子さん、能町みね子さんと対談をしている。どの人との対談も面白かったのだけど、私にとって特に印象的だったのは、山内マリコさんと、後述する酒井順子さんの章だろうか。

山内マリコさんは本の中で、「地元でイケてる人は地元を出ない」と語る。世代によって違いはあるのだろうけど、1987年生まれの私の世代もまさにそうで、Mちゃんしかり、中高時代にイケていた人ほど地元から出ていない。
私の地元は神奈川県小田原市なので、実家から都内の大学に通っていた人も少なくなかったのだけど、大学を卒業したあとはだいたいみんな地元で就職して、同級生と結婚して、子供を生んで、小田原市に家を建てている印象がある。中高時代にイケていた人ほどそうで、東京のIT企業で働いたりライターをやっていたりするのは、どちらかといえば私のような地味だったタイプだ。

だから何というわけでもないのだけど、AM読者の場合はどうだろうか。
今ではもう思い出すことすらほとんどないけれど、私たちが中学生や高校生だった過去が消えたわけではない。自分の出自に思いを巡らせるのに最適な章だと思うので、ぜひ読んでみてほしい。