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20代前半からの婚活もアリだが、その先長いのが人生だ。向田邦子の短編エッセイ

友人から聞いた話だけど、先日、話の内容からおそらく大学生と思われる女の子たちが、電車の中で「婚活」の話をしていたという。最近は若い子ほど保守的だともいうし、私も20代前半の頃を振り返ってみると、全然そんなことないのに「20歳なんてもうおばさん!」などと同級生たちと言っていた気がするから、それほど驚くようなことでもない。

ただ、30歳を数年過ぎて実感したことだけれど、人生はけっこう長いのである。だいたい80歳くらいまで生きるとして、40歳でようやく折り返しだ。
結婚は生殖と関連があるせいで、どうしても20代後半〜30代前半でしなくてはならないイメージがあるけれど、結婚したとして、その後の約50年がめちゃくちゃ長い。ディズニーのプリンセスのように、「王子様と結婚して末永く幸せに暮らしました」とはなかなかいかないのが人生だ。
個人的には、テクノロジー(卵子・精子凍結)か法改正(結婚制度の抜本的な改革)によって、結婚と生殖を完全に切り離した未来が早く訪れるといいなと思う。そうしたら、人生のパートナーを探すことを、そんなに急がなくても良くなるはずだ。

51歳で生涯を閉じた向田邦子

作家の向田邦子は、51歳の若さで、飛行機事故によってその生涯を閉じている。亡くなるそのときまで独身だった彼女が、もし70歳80歳まで生きていたらとしたら、はたしてどんな言葉を紡いだだろうかと私はときどき考える。

熟年の夫婦に、不倫に、向田邦子は「王子様と結婚したその後の話」をよく描いていた。夫を亡くした妻がよその男性との不倫に走り、それを現在進行形で夫に浮気されている妹になじられる『阿修羅のごとく』 なんか、嫉妬や憎悪が幾重にも重なっていて、人間関係のこれ以上ない不条理が表れており最高だ。

そんな向田邦子の本の中でも、私が特に好きなのが、短編とエッセイがまとまっている『男どき、女どき』 である。短い文章を集めたものなので、向田邦子にあまり馴染みがない人でも読みやすいと思う。
短編作品である『嘘つき卵』は、子供に恵まれない夫婦を描いた作品である。朝ごはん用にと生卵を割ったところで、割った卵の白身のところに、血豆のようなものがひとつぽつんと浮いている――というちょっとグロテスクな描写から始まるこの小説は、ネタバレをしてしまうと、最終的には主人公の左知子はめでたく妊娠する。ただその過程が一筋縄ではいかないもので、最後は左知子の妊娠を祝っていいものかどうか、判断に迷う作品だ。大恋愛で結びついたわけではない、静かな関係の夫婦をよく描いた作品だと思う

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