性愛で繋がる以外の家族がある――「自分にとって心地いいもの」を追求した先に『阿佐ヶ谷姉妹ののほほんふたり暮らし』

by Luke Bender

気がついてみれば、2022年もあと残り2ヶ月を切ってしまったところである――と言うと、多くの人は「まあ、そりゃそうだわな」と思うだろう。しかし私はというと、2022年の終わりは単純な1年の終わりではなく、もう少し大きな意味を持っている。どういうことかというと、水星人マイナスの私にとって、2022年の終わりは2020年から始まった大殺界の終わりでもあるからだ。

いや、そんなにめちゃくちゃ占いを信じているわけでもないのだが、2020年にせっかく予約したエストニア行きの飛行機がコロナウィルスの流行により欠航となって以来、確かにこの3年ほどは私にとってあまりパッとしない期間であったような気はする。

旅行に行こうと思えば感染者数が増え白紙、舞台を見に行こうと思えば感染者数が増え中止と、何かやろうと腰を上げるたびに出鼻をくじかれ、「じゃあもうどこにも行かないし何もしないからいいです」とずっと家の中でうじうじしていた。うじうじしながら延々とマンガを読んだりアニメを観たりしていたら今度は二次創作と同人誌にどハマりし別の方向へ開花してしまったのだが、まあその話はここでは割愛するとして……。

そんな大殺界もいよいよ終わりに差し掛かり、バルト三国や東欧の入国制限もようやく解除され始めた。引っ越しも済ませた。まあ所詮は占いなので盲信するのもどうかと思うが、なんとなく、来年からはまた大殺界の前みたいに、自分のやりたいことを思いっきりできるんじゃないかと期待してしまう。

同居を解消し、それぞれの道へ……とはならないのが魅力

さて、そんな大殺界が終わるかもしれない今、私は阿佐ヶ谷姉妹の『阿佐ヶ谷姉妹ののほほんふたり暮らし』を読んだ。6畳1間のアパートに同居している中年の独身女性・エリコさんとミホさんの2人が、やがて同居を解消し、それぞれの道へ……とはならないのが、本書の最大の魅力だと思う。

ご存知の人もいるかもしれないが、阿佐ヶ谷姉妹は現在、もともと2人で住んでいた6畳1間の隣の部屋をもう1つ借り、同居は一応解消したが「お隣さん」の状態。女性2人でルームシェアというとどうしても期間限定のイメージがつきまとうが、「男と女のカップル以外、性愛で繋がる以外の家族のあり方」をタイトルの通りのほほんと実践しているこのエッセイを読むと、気持ちがラクになる人がけっこういるのではないか。

6万円の部屋を2つ借りるより12万円の部屋を1つ借りるほうがインテリア的に見栄えがよかったりするので「お隣さん」ってあまり現実的ではないのかもしれないが、カップルや夫婦だって、同じアパートの別の部屋に住んでたっていいよな〜と視界が広がる。

中でも後半の物件探しやIKEAの家具の組み立てに奮闘する日記は、私も最近引っ越したばかりなのでとても共感しながら読んだ。「2人で組み立てるように」と説明書にある家具も私はバリバリ1人で組み立てたが(※真似しないでください)、理想の部屋を実現していく過程って楽しい!