阿佐ヶ谷姉妹と見ていると癒されるのはなぜ

ところで、YouTubeのコメントやAmazonのレビューを読んでいると「阿佐ヶ谷姉妹を見ていると癒される」「独身のまま年齢を重ねてもこんなにのんびり楽しく生きられるんだ」などといった声を見かけることがある。おそらくそれは、エリコさんとミホさんが、のほほんとしているようで「自分にとって心地いいもの」を、ちゃんと選んできたからではないか。

ミホさんは本書で、白髪が増えたり首にイボができたり腰が痛くなったりと体の老化を感じつつも、「とはいえ、若い時に戻りたいとは思いません」と語っている。お芝居がしたいのかよくわからず時間を持て余して事務のアルバイトに遅刻していた若い頃よりも、お笑いの仕事をしている今のほうが好き勝手できているし、気軽だと。私も、映画や文筆に関わる仕事がしたいがどうしたらいいのかわからず事務の仕事を29歳までしていたので、ミホさんの感覚はわかるような気がする。

体は老いたし独身のままだが、「自分にとって心地いいもの」がちゃんとまわりにある今のほうが、快適で気軽だ。若い時に戻りたいとは思わない。『阿佐ヶ谷姉妹ののほほんふたり暮らし』はそんなわけで、気負わず読めるし、年齢を重ねることをポジティブに捉えられる。

私にとっては大殺界が明ける2023年、来年こそ海外旅行に行きたいし、今よりももっと自由に、ますます好き勝手に、自分のやりたいことをやれたらいいなと思う。ボリュームのある長編小説は年末年始の休暇用にとっておくとして、今の時期は、こんな軽いエッセイを手に取るのが合ってるかも。

Text/チェコ好き(和田真里奈)