自身がない=自信を持てない恋愛関係を望んでいるのか?
自分の希望に向き合うしかない!

 わたしにも相手の期待に合わせて動いていた時期があります。
家庭的な子がいいとか言うひとに対して料理作って媚びたり、仕事帰りで疲れたと言うひとにビールとタバコ買っておいてあげるとか、プルオーバーのパーカーをラフに着てるとかわいいよねと聞くと次の日にはRoganとKITSUNEを買いに走ったり、なにこれ我ながら自分がなさすぎ! ひどい! 恥ずかしい!

 生まれながらの女性ではないということを劣等感の理由にして、男に認められたい、関係を破綻させたくないと思うあまり、都合のいい存在に成り下がっていたわけです。
相手をすべて是として合わせる関係を続けていると、嫌われたくないことがいちばんの目的になってしまう。
自身がないと、自信を確立することなんてできません。

 髪長い子が好きと言われたからってショートカットにエクステ付けるのか!?
彼がおっぱい大きい方がいいって言うからシリコンバッグ入れるのか!?
板野友美をかわいいと聞いたら目頭切開して鼻とアゴにプロテーゼ入れるのか!?

 恋愛の渦中にあると、劣等感に苛まれたり不安になって、自身=自信がなくなりやすい。
だから別の女性と比べて、そこからズレてしまったら嫌われてしまうのでは? 変に見られるんじゃないか? などとおびえて自分の欲求を抑圧してしまう、または、「あの子はかわい子ぶって男に媚びてる」「あざとい」とか誰かを敵視したり嫌らしい目で見てしまう。
そういう自分の内面を掘り下げてみると、問題の焦点がクリアになりそうです。

 劣等感に気づけたことを成長する機会ととらえて、「自分はこうなりたい!」と楽しくやってる方が魅力的に見えるんじゃないでしょうか。

 なあんてきれいにまとまったね! 自分が聖人みたいに思えてきたよ! わたしこんなに強くなんてないのに!

 先述の『メディア』でも、娘に期待をかけながら母親役にしがみついて依存する自分の母を前にして、ひとみはたびたび、くだんの女性学の講師の「“大人”とは自分が今何に対してイエスであり何に対してノーと思っているかがはっきり言える人間のことをさすのです」という発言をリフレインして、自立しようとします。
表面的には仲が良く、「幸せそう」に見える母親との関係を現状維持するのではなく、苦渋の決断で親元を離れよう、と。しかし……その後の衝撃のラストはぜひみなさんの目で確認していただきたいです。
山岸凉子はやっぱりすごい! きれいごとだけでは済まないなんて展開は、往々にしてあるものですよね。

Text/鈴木みのり

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