セックスの『イク』とはどこへ行く?~性と死の関係性を添えて~/春画―ル

『イク』の語源どこから来たの問題

春画歌川国貞《正写相生源氏(しょううつしあいおいげんじ)》1851年 画中に「きがいく」と書かれている

歴史上、生まれては消えていく言葉がある中で『素股(すまた)』や『雁高(かりだか)』、『イク』など、現代まで残る言葉がある。その理由のひとつに、私たちの言語感覚にしっくり馴染んだからだろう。たとえば「イク」の他に「落ちる」という似た言葉があるのだが、今もなお使われているのは「イク」であるようにだ。そしてこの『イク』の由来について書かれた記事はネット上に多くある。

よく見かける『イク』の語源の説を要約すると、『「イク」とは日本の宗教観が関わっており、「お浄土へ逝く」ことを意味している』、『西洋ではもっぱら「COME(カム)」が使用される』と書かれている。これらの説は一見納得してしまいそうになるが、なぜセックス中に発する言葉に宗教観が関係しており「お浄土への旅立ち」から「逝く」になったのかの具体的な理由までは書かれていない(最初に言い出した方は誰?)。

今一度わたし自身もこの『イク』とはどういう現象なのか、及び「『イク』の語源どこから来たの問題」について考えてみようと思う。

心理的インパクトが大きい「イク」こと

春画歌川豊国《絵本開中鏡(えほんかいちゅうかがみ)》1823年 画中に「いくつきがやった」と書かれている

まず、セックス中の「イク」とはどのような現象かをおさえておこう。
この記事では「イク」を「オルガズム」に当たる現象とします。
『オルガズムの科学』によると、オルガズムの現象の定義は様々なのだが、そのひとつとして以下のものがある。

■女性の性的反応としてオルガズムに至る現象

(1)想像、空想、記憶、感覚の刺激

(2)膣に流入する血量の増加、膣の腫脹、膣の分泌液

(3)【ここがオルガズム】肛門管の下部や骨盤下部の筋肉の収縮、子宮の収縮、膣の収縮

(4)満足感、リラックス(生殖器への血流の減少、筋緊張の緩和)、恍惚とした感覚

そして、「オルガズムについて書いてください」のという実験では、多くの人が「突然頭がふわっとするような感じから一気に高揚する」や「身体がおもいきり緊張して、解放されるかんじ。そして安らぎやリラックスされる」などの回答があったそうだ。

上の性的反応とオルガズムの説明では筋緊張や性器等の収縮を「オルガズム」としているが、人々の感覚としては、身体の興奮や緊張から筋緊張の緩和やリラックスの流れを「オルガズム」、つまり「イク」ことであると捉えているようだ。

そしてオルガズム、つまり「イク」ことは、身体のどの部位で感じたかよりも心理的なインパクトがより大きいことがわかり、感じ方にも個人差がある。