江戸期にも手マンを追求した性典が!「気持ちよくなってもらう」という意識/春画―ル

江戸時代流・女性が気持ちよくなる手マンの方法とは

閨中紀聞 渓斎英泉《閨中紀聞/枕文庫(けいちゅうきぶん/まくらぶんこ)》

いきなりのこの画像に驚いた方もいるのではないでしょうか。
これは性典物に描かれている絵です。

左側が妊娠中の女性の胎内で、右側が膣に指を挿れた様子を膣の中から捉えた図です。この絵を描いた渓斎英泉は「女性の身体の中が本当にこのようになっているとは信じないでジョークとして捉えて欲しい」と文中に補足してくれています。
どうやら版元(今で言う出版社さんかな)が、真面目過ぎる性知識のみの書物だと読者が増えないので興味をそそる挿絵も描いて欲しいと頼んだようです。

今回はこの右側の絵で描かれている「くじり」がテーマです。

江戸期は女性器の部位をどのように認識していたのか?

「くじり」とは聞きなれない言葉だが、今で言うと、「指弄」、「手マン」のことである。
みなさんのご存知の通り、やみくもに指でぐりぐり膣内を触ったり、指を出し入れされても痛いし傷がつく可能性もあります。女性は全く気持ちが良くないし、なんだか悲しい気持ちになる。

まず、膣の「どこ」の部分をどのように触ればよいと考えられていたのかを当時の性典物からご紹介するために、各部位について解説されている図を紹介する。

艶道日夜女宝記 月岡雪鼎《艶道日夜女宝記(びどうにちやにょほうき)》

右側の絵は「玉門」(女性の陰部のこと)を真正面から捉えた図である。
一番上の穴は小便が出る小さい尿道口で、中央の「子つぼ」に繋がる穴が膣口である。

最初の画像の胎内図に描かれている“赤いイソギンチャク”のようなものが、膣の奥に存在する「子つぼ」であると考えられていたことを示している。

そして、左側は玉門の中を捉えた図である。この《艶道日夜女宝記》は色事に不慣れな人や未経験な人でもわかるような内容になっており、どの部分に男根を挿入したらよいのかも書いてくれている。一番下にある穴は便が出る穴であり、直腸と繋がっていることが図からわかる。

親指と人差し指で女性器を刺激する方法

艶道日夜女宝記 月岡雪鼎《艶道日夜女宝記(びどうにちやにょほうき)》

解説によると、手マンを行うときは親指と人差し指を使い、注意事項として「爪をしっかり切るように」と書かれている。

女性器の触り方を読み解くと、

中指と人差し指の腹で玉門の中の袋のようになっている部分の下をなでる。
男根を出し入れするときにも、この部分をこするのが良い。
(中略)
また交わりながら、さねの上(図の性器の陰核の周辺)を押すのも良い。

“玉門の中の袋の部分の下側”とは、図中で棒線で示されている箇所である。おそらくは膣の入口に近い部分に存在し、指で触るときも男根を挿入するときも、この辺りを触ると気持ち良くなるそうだ。入口部分が性感帯の方は気持ち良いかもしれない。

婚礼秘事袋 月岡雪鼎《婚礼秘事袋(こんれいひじぶくろ)》

月岡雪鼎の《婚礼秘事袋(こんれいひじぶくろ)》でも指弄の方法が書かれており、図中の上の穴を小便が出る穴、その下の穴の奥に「子つぼ」があると書かれている。

さね(陰唇)の裏をよく撫でてから陰道(膣)の上側を軽く刺激する。
この図の指で刺激している部分を男根でこするのも良い。

閨中紀聞 渓斎英泉《閨中紀聞/枕文庫》

ご紹介してきた《艶道日夜女宝記》は1764年頃の出版なのだが、上図の渓斎英泉《閨中紀聞/枕文庫》は1822年頃の出版である。年代が変われば書かれている情報に変化があるようで、上図の指弄についても読むと、

最初、割れ目の辺りから毛の生え際をなで下ろし、肛門を避けて膣の入口を指先で長い時間いじる。中へ指を一本入れて上の方を強く指の腹でかき撫でる。
性器が濡れてきたら二本の指を挿入し、ぐるぐるとかきまわし、ぐっと奥の方へ指を入れる。中でナマコのようにひくひくするものがあれば、いつまでも浅く深く触るべし。
もし女性が気持ちよさそうな様子であれば、二本の指先で子つぼを触るにしたがい、子つぼが動き、火のように熱くなる。
そのとき充分な美快液(よがりえき)が出ていることを確認し、男根を挿入する。
女性をしっかりと抱きしめ、それ以降は互いの心のままに続けるべし。

今度は指の数を最初は一本にして、同様に上の方を指で刺激するようだ。

手マン後の挿入にベストなやり方

最初に紹介した性典物よりも解説が細かくなり、指弄後にいつのタイミングで男根を挿入したらよいのかも書かれている。

艶道日夜女宝記 月岡雪鼎《艶道日夜女宝記(びどうにちやにょほうき)》

ちなみに挿入時の触り方も紹介されている。
上図のように、陰唇の上部分(クリトリスあたり)を刺激するとどんな女性でも気持ち良くなるそうだ。

誤解のないようにお伝えすると、江戸期の性典物で何度も登場する「子つぼ」は「子宮」と漢字表記する。しかし、わたしたちが認識している子宮とは少し認識が異なる。

艶道日夜女宝記 月岡雪鼎《艶道日夜女宝記(びどうにちやにょほうき)》

妊娠する方法として、この「子つぼ」部分に男根の鈴口が向かうことでできると書かれている。交合の極意は「穴と穴を合わせる」ことにあると記載されており、上図で男根の穴と子つぼの穴が合わさるように書かれているのだろう。

女性が気持ち良くなり玉門が潤いだすとこの子つぼが張り出し、男根の穴と合わせることができる。子どもを授かるためには女性に気持ち良くなってもらうことが必要なので、互いが気持ち良くなるための数々の性具等が性典物の中で紹介されていると推測できる。
妊娠についてだが、もちろん「楽しむための交合」と「子どもを授かるための交合」を区別して記述している書物もある。しかし、その交合の目的をたどっていくと、子孫を繁栄させるためという目的が存在していることが分かる。

自分の祖先を辿っていくと、「もしかしたら私のご先祖様も、いま私が読んでいる性典物を読んでいたかもしれない。」と、そんなことを考えるときがある。その結果、わたしたちが生まれてきたのかもしれない。春画や性典物をみて、そんなことをふと考えてしまうのだ。

手マン(くじり)で使う男根型の道具

艶道日夜女宝記 月岡雪鼎《艶道日夜女宝記(びどうにちやにょほうき)》

中央の黒っぽい男根型の道具は指に装着する「くじり」と呼ばれる道具である。

「くじり」とは小さい張形である。(張形とは現代のディルドのような性具である)使い方は、湯でくじりを温め指につけて女性器の穴の上側を刺激する。

図のように膣を刺激するのだが、べっ甲や水牛の角を彫り作製されるため、指ほどの柔らかさや弾力はない。しかし指で直接性器を触らないので、もしかしたら爪で傷がつくことはないし便利なのでは? と思った。

このくじりという道具の実物を以前見せてもらったことがあるのだが、形状や模様は上の絵とそっくりである。外側に凹凸があり、このデコボコがうまく性器の中を刺激してくれるのだろう。

春色入船日記 歌川国盛二代《春色入船日記(しゅんしょくいりふねにっき)》

今回は、江戸期の指弄の方法をご紹介しましたが、共感できる部分はありましたか?

余談だが、当時の本を読んでも「潮の吹かせ方」の掲載は見かけたことがない
稀にSNSで「潮を吹かせている春画がある」などの書き込みを見つけるのだが、詞書や研究者の解題を読むと、股の中から金の仏の光が漏れている光景であり、潮ではないことがわかる。

泉湯新話 歌川国貞《泉湯新話(せんとうしんわ)》探していた金仏がお股の中に!

現代のように勢いよく潮を吹くなどの派手な描写は江戸期のもので見かけず、指弄は女性を気持ち良くして性器をうまく濡らし、挿入に導くためであることがわかる。

春色入船日記 歌川国盛二代《春色入船日記(しゅんしょくいりふねにっき)》

ちなみに本文で登場した「美快液」は「陰水」などとも言われ、上図のように白く大量に流れだす描写は存在する。

時が経つにつれセックスのハウツーは変化していくのだが、「相手に気持ちよくなってもらいたい」の気持ちは変わらないのですね。

Text/春画―ル
初出:2020.03.08