想像と違うと思ったことはない「小さい頃に思い描いていた結婚」/カレー沢薫

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長谷部が帰ってきた、極になって。

上記の一文がわからない者は、もはや俺とここで出会うべきではなかったのだ。お前はお前の生きるべき場所で死ね。

とにかく長谷部が生まれ変わって帰ってきた。

つまり前回のコラムと今回では、プリズムショー前、プリズムショー後ぐらい世界観が違う。

長谷部極に関してはネタバレになるので詳細は控えるが、一言で言うと「溢れていた」

説明になっていないが見た瞬間そう思ってしまったのだから仕方がない。とにかくあらゆるものが漲って、溢れかえり、そしてはみだしていた。少なくとも条例ぐらいは軽く違反している。

「匿わねば」そう思った。

しかし、そんな極長谷部に、実装後4秒で対面したわけではない。刀剣乱舞、へし切長谷部、極についてわからない者は、もうここではないどこかで死んでいると思うが、どうしても、全然意味がわからないがここで死にたいという、自分の命に価値を見出していない人間に説明するとしたら、極はキャラクターをランクアップさせることである。

ランクアップさせることで、性能、ビジュアル、ボイス、ほぼ全てが一新される、革命的というより革命そのものなのだ

ランクアップさせるためにはキャラクターを「修行」に出す。そして修行に出して、実時間で96時間後、TM『とてもまずい(プレイヤーの命が)』レボリューションをしたキャラが帰ってくるのである。

つまり4秒どころか4日、まんじりともせずキャラの帰還を待つのである。

しかし、課金アイテムを使えば4秒で帰すことも可能なのだ。

そのアイテムは1000円以下であり、もちろん必ずしも使う必要はない。ちなみに長谷部本体も出すのが難しいキャラではないため金はかかっていない。

つまり、実質どころか、本当にタダなのだ。タダでTM体験ができるのである。

そう、刀剣乱舞はゲーム自体にほぼ金がかからない。他のソシャゲがあらゆる手段で金を出させようとする中、一貫してこのスタイルである。

なんという神ゲー。

そう言いたいところだが、刀剣乱舞をするときは、いつも傍らに銭形警部が佇んでいる。

「いえ、奴はとんでもないものを盗んでいきました…あなたの時間です」と。

刀剣乱舞は逆にこっちが「金で解決させてくれませんか?」と言っても一貫してこのスタイルなのだ。

他のソシャゲが「出るまで回す」なら刀剣は「出るまで回れ」なのである。回るとは周回プレイだ。ひたすら己の運だけを頼りに、元ちとせの『ワダツミの木』をBGMに単純作業を続けるしかない。そして何度も言うが、刀剣乱舞は控えめにいってゲーム自体は、98点だ。もちろん50000兆点中。

よって、長谷部はタダだが、レベルを上げたり、修行に出すアイテムを手に入れるために、いくら金を積んでも戻ってこない時間を使っている。

しかし、いいのだ。

極論を申せば、衣食住、命に関わること以外、全て金の無駄、時間の無駄なのだ。

それすらも「どうせ死ぬのに、食ったり、寝たり、なんという無駄」という話なのだ。

我々は何しても「DEAD END」なのだ。

じゃあせっかくなら、俺は、金を土方さん、時間を長谷部に捨てるぜ。

他人から見れば、貴重な金と時間をドブに捨てている人かもしれない。しかし私にとっては、女神の泉だ。金や時間を投げ込むと女神様が「あなたが落としたのは土方歳三(宝具レベル5)?それともへし切長谷部(極)?」と出てきてくれるのだ。

それに「両方!」と答えても「あなたは欲張りですね」と両方ボッシュートしたりしない。そんなことしたら、その日から私は“神殺し”と呼ばれるだろう。

つきつめて、虚しくならないものなどほとんどないのだ。ならば、虚しくなる隙がないほど溢れかえって逆に「しんどい…」とか言っているオタクによくある現象状態を長くキープするしかない。

そんなわけで今回のテーマは「小さい頃に思い描いていた結婚」だ。