お互い大したことはしないから「相性がいいなと実感したこと」/カレー沢薫

カレー沢バナー
都心ノ病院ニテ幻覚ヲ見タルコト (P+D BOOKS)

今回のテーマは相性がいいなと実感したこと」である。

その昔、夫に「あなたといると楽だ」と言われたことがあるような気がする。

おそらく結婚前のことなので、現在は「もぅマヂ無理…」かもしれないし、本当にそんなことを言われたのかさえ定かではない。私が都合の良い幻覚を見た、という可能性も高い。

最近では「夫の存在が幻覚説」も信ぴょう性を帯びてきた。

では、なぜ夫の幻覚はそんなことを言ったのであろうか。

夫に「あなたの幻覚の発言の意図を教えてくれ」と聞いたところで、ノーモーションで病院に連れていかれるだろうから、自分で考えるしかない。

例えば、甲斐甲斐しく世話を焼いてくれるタイプの女なら一緒に居て楽、と言うのも頷けるが、そう言った意味で夫に楽をさせたことは観測史上、未だかつて一度たりとも、歴史的皆無だ。

では、夫の幻覚は一体何をもってして私といると楽なのか。

おそらく、世話を焼いてくれるわけではないが、行動に干渉や制限をかけてこない、という点が楽なのではないだろうか?

そう夫の幻覚に問いかけてみたが、返事はない。返事がないのは肯定とみなす。

この、「お互いのすることに干渉しない」という点は、私と夫の幻覚は相性が良い方だと思う。

と、今まで思っていたのだが、夫の幻覚はともかく私は本当に、相手の行動を制限せず、束縛しないタイプなのだろうか。

前後の連載記事