さらに進化した魔性の女

さて、かすみちゃん目当てで魚群が来たところで、雑魚に用はありませんよね。リナちゃんは、素朴くんやリトル清原似くんには、あからさまに背を向け(これにはマジでビビった)、楽しそうに話すのは、いい体をした消防士くんです。

「消防士くんはわたしがいないと何もできなかったもんねー?」
とリナちゃんが言えば、消防士くんも、
「いや、ほんとに。小学校時代は俺リナちゃんのあとばっかくっついてたから」
と続けます。常にそうした調子で会話を続けること数分。
なぜか、「リナちゃんの尻を追わなければならない、消防士くん」の図が完成してしまったのです。

対等な関係性のはずなのに、会話だけで、「相手が自分に片思い」かのような空気感を作り上げる。
さすがです!

さて、リナちゃんとかすみちゃんは、2次会には参加せず1次会終了後にあっさりと帰宅。消防士くんをはじめわたしも二次会に参加しました。
みなで楽しく談笑していた、そのときです。
「あれ? リナちゃんからLINEが来た」
消防士くんが自らのスマホ画面を確認すると、そこには。
『いま、かすみのとこ』
(注釈:かすみちゃんの実家は「スナック・ローゼ(仮)」)
たったそれだけの文面です。それだけで、消防士くんはすくっと立ち上がり、
「俺、ローゼ、行ってこよっかなァ〜」

遠隔操作もできるんかい!

楽しかった二次会など眼中から即座に消えた消防士くんは、そそくさと店を後にしました。これを調教と言わずして、なんと言おうか……。

さらに後日、この一連の出来事を仲の良い男女混合同級生グループLINEに投下すると、細マッチョくんが苦言を呈するではないですか。
『リナちゃんは寂しがり屋なだけなんだよ。金髪イケメンくんのときもあのあと付き合って(注釈:やっぱり!)、俺、よく相談に乗っていたけど、根は優しい子なんだよ』
その後、裏で女子だけLINEに移行し、
『おめーは相談女の保険にされただけだろ!』
などなど細マッチョくんの印象がだだ下がりになったのは言うまでもありません。

魔性の女とは、モテない女に何を言われても動じない。だって身を滅ぼすのは愚痴を叩いた方だから。

魔性の女。それは、SMクラブの女王様の凄腕テクニックを天性で備えた、孤高の天才なのかもしれません。幻想なんかじゃ、なかった……。

Text/春山有子

初出:2018.12.13

次回は<「魔性の女」なんて、きっと(ほぼ)存在しない/生湯葉シホ >です。
「魔性の女」について考えるリレー連載第3回。ライター生湯葉シホさんが出会ったのは、小動物のように可愛らしいミホちゃん。ミホちゃんには不思議な魅力があって狙った男性をすぐに落としていましたが、彼女はずっと「魔性の女」だったわけではないと考察します。