「魔性の女」なんて、きっと(ほぼ)存在しない/生湯葉シホ

モテる魔性の女の画像 Đàm Tuong Quân

いきなり自分語りで申し訳ないのですが、私はかつて付き合っていた男性が蓋を開けてみたらとんでもないモラハラ野郎で、2年近い年月をかけて死ぬの死なないだののゴタゴタを落ち着かせ、ようやく彼と別れられたことがあります。
別れた直後、彼は周りの友人にこんなことを言いふらしていたそうです。

「やっぱ東京の女はなに考えてんのか分かんねえわ」。

当時それを人づてで聞いたときは、相手を振ってしまったという罪悪感もあったのでなにを言われても仕方ないと思っていたのですが、よくよく考えてみるとおかしな話です。だって、私たちが別れたことと私が東京出身であることって、マジでひとつも関係がない。

いま振り返ってみると、彼は本気で私に対して「東京出身の女だから」どうこう、と思っていたわけじゃなく、おそらく自分が振られたというストーリーをメロドラマチックに演出したいがゆえに、そこに「東京の女」という分かりやすいラベルを貼り付けたのだと思います。

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自己紹介が遅れましたが、私は仕事と趣味を兼ねてWebで文章を書いている、生湯葉シホと申します。

(冒頭の話を除けば、)自分自身がなにか強烈な恋愛エピソードや実用的なテクニックを持ち合わせているわけではないのですが、ありがたいことに私の友人・知人には恋愛経験が非常に豊富な人が多い。

今回は、そんな彼女/彼らを見ていて思ったことを書きますね。先に結論から言うと、私は「魔性の女」という存在にはちょっぴり懐疑的です。

2週間で婚約者のいる上司を落とした「チカちゃん」

大学のとき、バイト先のテーマパークに、同い年くらいのチカちゃんという女性がいました。小動物を思わせる可愛らしい顔立ちとは対象的に、いつも目だけは笑っていないようなミステリアスな印象があって、不思議な魅力を持った子だったことを覚えています。

ある日、バイト先のバックヤードで、チカちゃんに突如「昨日、マネージャーのSさんと寝ちゃった」と衝撃的な告白をされました。彼女からその報告を受ける2週間くらい前に「Sさん、ちょっと気になるかも」とは言われていたのですが、Sさんには婚約者がいるという話は他の社員づてに聞いていたし、そもそもその時点では、チカちゃんにも彼氏がいました。

彼氏のことを尋ねると、「彼氏には別れようって言った。あと、Sさんにも婚約者と別れてもらうことになった」とチカちゃん。いや、どんなスピード感だよ、とはちょっと思いましたが、彼女側にあまりにもためらいがないので、「そ、そっか……」と言うしかありませんでした。

私は正直に言えば、当時、彼女のことを「魔性」っぽいなと思っていました。自分がもしSさんの婚約者の立場だったら、「マジでふざけやがってクソビッチめが」くらいの悪口を言っていたと思うし、なにより、チカちゃんに一切の罪悪感めいたものが感じられないのが怖かったんです。