「私なんかが好きになったら迷惑かも」果たして迷惑じゃない恋愛は存在するのか?

迷惑をかけない恋愛

by pawel szvmanski

コロナによる行動制限が少し落ち着いてきて、街がまた混みあってきた。人が多いと、何かにつけて待ち時間が長かったり、混雑をよけて歩かなければならなかったり、不便も多い。でも一方で、色んな人を見かけるのは面白い。最近朝の電車でよく隣に座るおじいさんは、いつも前のめりで必死に漫画を読んでいる。ページをめくるときに肘があたってちょっと邪魔ではあるが、なんとなく彼を見ていると元気が出てくる。

「昔は電車の中でみんな煙草吸ってたんだよ」と上司が言っていた。その人は愛煙家なので喫煙できる場所がどんどん減っているのが寂しいようだ。私は煙草を吸わないので禁煙マナーはありがたいけれど、とはいえ電車ってみんなが申し訳なさそうにしていてちょっと息苦しいと感じることもある。荷物の多い人、体が不自由な人、体が大きい人、ベビーカーを押している人、スマホのアラームが鳴っちゃった人……。少しでも集団の輪を乱すと大勢が冷たい視線を向ける、その感じがなんだか嫌だ。

「他人に迷惑をかけてはいけない」というのは特に日本社会に根強い道徳観だが、時に恋愛にまで及ぶようだ。以前、友人が「私なんかが彼のことを好きになったら迷惑ではないか、だったらこんな恋愛やめたほうがいいのではないか」と悩んでいたことがある。その彼の気持ちを知らないからなんとも言えないが、まぁたしかに迷惑なのかもしれない。「迷惑ならやめる」ということでやめられるなら、やめた方がいいのかもしれない。でも、はたして迷惑じゃない恋愛って存在するだろうか?

「恋愛スピード狂」を自認する私は、どんどん人を好きになって、どんどんアプローチして、たまにはアプローチされて、付き合ったり別れたり、セックスしたりしなかったりしてきたわけだが、その恋愛遍歴はそのまま他人に迷惑をかけてきた歴史である。

基本的には、特に好きな人以外からの恋愛のアプローチというのは、対応に困るし、面倒だし、迷惑なものだと思う。しかも好意というのは一定のものではないので、私が好きになって告白して付き合ってもらったのに、やっぱり冷めてきてフってしまって、結果的に振り回してしまったということもある。

だから私は好きになる人に対してはいつも「迷惑かけてごめん」「私なんかに好きになられて可哀想」と思っているが、正直、「でも、まぁ別にいいよね」とも思っている。「他人に迷惑をかけてはいけない」というのをしっかり守ろうと思ったら恋なんか苦しいだけだろう。