“リスペクトの宝庫”とも呼ぶべき、愛に溢れた作品

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 本作の核となるのは、ウェイドがジェームズ・ハリデーを心から尊敬していること。ゲームに夢を魅せられた少年が作ったゲームを、それにまた夢を魅せられる者がクリアに導こうとする。その構図がスピルバーグの歩んできた道と等しく感じる。

 スピルバーグは世界的巨匠でありながら、かねてからジョン・フォードや黒澤明など先人の映画監督のリスペクトが止まない。本作には数々の既存の有名なキャラクターや作品が登場するが、決して“利用”に感じない。それはスピルバーグの厚いリスペクトが確実にあるからだろう。
そもそも映画というものが長い歴史の中でオマージュの連続である。“リスペクトの宝庫”とも呼ぶべき本作の終盤でハリデーの言い残すセリフが、「作品」というものを強く愛する者なら心を動かさずにはいられない。これはSF作品でありながら、映画やアニメやゲームなど夢を魅せてくれた数多くのクリエイターへの愛を謳った作品でもある。

 未来像を映してきたかつてのSF作品は、空を飛ぶ自動車や万能ロボットなど不確かな未来を映したものが多かった。現にその未来である今、2018年にそれらは無い。厳しい現実を見せられた気分になる。しかし本作はVRやドローン、AIなどといった現代の延長線上の理想的な未来像が描かれる一方、貧富の格差が激化して街が荒廃しているという現実まで見せつける。だから決して絵空事ではない。確かな未来像として、今後の技術や文化がここに追いついていくのが想像できる。

 すべての夢追い人の指標になるような、希望に満ち溢れた作品。スピルバーグが2018年の未来にこの世界を魅せてくれることに、感謝の念がこみ上げてくる。
政治サスペンス映画『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』公開の翌月が、こんなに愛と冒険と夢に溢れた映画だなんて。スピルバーグの作品の振り幅に改めて驚かされる。

 映画やアニメやゲームを愛する者だけが作ることのできる、ディストピアな拡張現実。これは物語の中だけではなく、多くの少年の夢を叶えてきたジェームズ・ハリデーにスピルバーグ本人がやがてその存在になり得るだろう。

「いつまでも夢を見させてくれてありがとう」 ――そんな素直な気持ちが鑑賞後、涙として溢れ出る人も少なくないはずだ。

ストーリー

 2045年、貧富の差は激しく、街は荒廃し、人々はVRの世界“オアシス”の中で理想の人生を楽しんでいた。17歳の孤独な青年ウェイド(タイ・シェリダン)もその中の一人だ。

 ある日、“オアシス”の開発によって大富豪となったジェームズ・ハリデー(マーク・ライランス)が亡くなり、VRの世界の中で隠された3つの謎を解き明かした者に莫大な遺産と“オアシス”の運営権を明け渡すというメッセージが発信される。

 世界中の人々が謎解きに動き出し、ウェイドもそれに参加する中で美女アルテミスと出会う。彼女に恋をしたウェイドは1つ目の謎を解き明かすが、ハリデーの遺産を狙う巨大企業IOIに狙われることになる。
やがてアルテミスの正体、サマンサ(オリヴィア・クック)と現実世界で出会い、仮想現実の中で出会った仲間たちと手を合わせて、すべての謎を解き明かすための冒険に出る――。

4月20日(金)全国ロードショー 3D/2D/IMAX3DR/4D

監督:スティーブン・スピルバーグ
キャスト:タイ・シェリダン、ベン・メンデルソーン、オリヴィア・クック、サイモン・ペッグ、マーク・ライランス、森崎ウィン
配給:ワーナー・ブラザース映画
原題:READY PLAYER ONE/2018年/アメリカ映画/140分

次回は<伏線が回収される快感!三池崇史監督×櫻井翔の規格外サスペンス『ラプラスの魔女』>です。
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