死ぬまでには観ておきたい映画のこと

男性社会で女性が立ち上がる。その意味を、今こそ考える『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』

ベトナム戦争が泥沼化する1971年、アメリカ政府の最高機密文書「ペンタゴン・ペーパーズ」をワシントン・ポスト誌が入手する——。スティーブン・スピルバーグ監督が豪華キャスト二人で描く実話作品。

『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』の画像
©Twentieth Century Fox Film Corporation and Storyteller Distribution Co., LLC.

 女性がリーダーシップを執ることが難しい時代があった。
その時代の最中、ワシントン・ポストの女性経営者キャサリン・グラハムは会社の未来だけでなく、その後の女性の社会進出の明暗まで定めることになる。

 スティーブン・スピルバーグ監督は新作の制作を押しのけて、急遽本作の制作に取り掛かった。トランプ大統領によるメディア規制や、セクハラ問題で揺れる「#MeToo」など、今まさにアメリカ映画界が無視できないテーマが盛り沢山だ。
スピルバーグと数々の作品でタッグを組んできたトム・ハンクスがワシントン・ポスト編集主幹のベン・ブラッドリーを、多数のオスカーを受賞しているメリル・ストリープがアメリカ初の女性新聞発行人キャサリン・グラハムを演じる。

ヒーローもヒロインも存在しない

『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』の画像
©Twentieth Century Fox Film Corporation and Storyteller Distribution Co., LLC.

 スーパーヒーローのように、ただ一人だけが命を賭けて戦うような安易なものではない。グラハムは機密文書の記事を載せることで、ワシントン・ポストの従業員、スポンサー、社会的地位をすべて脅かされる。
多くの犠牲を払うことを知った上で、ジャーナリストとしての貫くべき正義とは何か――。

 当初、ライバル誌であるニューヨーク・タイムズにスクープを奪われたブラッドリーは明らかな苛立ちを見せ、いかにも競争心に満ちた自信家として、「ペンタゴン・ペーパーズ」(アメリカ政府の最高機密文書)を求める。だが、グラハムの真実への誠実な追求に触発され、何のために新聞を作っているのか彼自身の葛藤の末、競争心から正義感へと目的が変わっていく。
ここにはヒーローもヒロインも存在しない。人同士が手を取り合いながら、巨大な権力に立ち向かっていく。

 社会派作品といえど、アクション映画さながらの迫力を感じる。
ついにペンタゴン・ペーパーズを入手し、編集に取り掛かる時の長回しと手持ちカメラの効果で映画の中の世界に引きずり込む。これはスピルバーグと長年タッグを組んでいる撮影監督ヤヌス・カミンスキーの手腕によるもの。まるで『宇宙戦争』の宇宙人による襲撃シーンや、『プライベート・ライアン』のノルマンディー上陸作戦のようにあたかもその場にいるような臨場感に溢れ、ブラッドリーとグラハムの張り詰めた緊張感を共有できる。