急に父になった遊び人がついた世界で一番優しいウソ『あしたは最高のはじまり』

「あしたは最高のはじまり」の画像 Julien PANIÉ

 人が大人になる瞬間とは、どのタイミングを指すのだろうか。

 赤ん坊を預かることで、“遊び人”が突然父親になり、大人になる…ただそれだけの映画ではなく、彼がつき続ける“ウソ”が少女を笑顔にする。子どもと子どもが一緒に成長していく姿が微笑ましく、やがて涙を誘う。

 『最強のふたり』のオマール・シーが主演の“遊び人”サミュエルを務め、本国フランスで8週連続トップ10入りを果たしたヒューマン・コメディ。
『人生、ブラボー!』のアントワーヌ・ベルトランが主人公の手助けをするゲイのベルニーを、『ハリー・ポッター』シリーズのクレマンス・ポエジーが姿を消す母・クリスティンを演じる。

サミュエルの優しいウソのスケール感

「あしたは最高のはじまり」の画像 Julien PANIÉ

 毎晩毎晩、別の女性を取っ替え引っ替え。その日もベッドに二人の女性を寝かせていたのに、「ガキがガキを育てられるかよ!」とサミュエルはそのベッドに赤ん坊を運んでくる。
ロンドンを舞台に子育てに奮闘するサミュエルの珍道中が笑いを誘い、適当で気ままに生きていた彼が子育てを始めることで生活が様変わりする姿に目が離せない。

 グロリアが母・クリスティンに育児放棄されたという事実に傷つかないように、サミュエルはあるウソをつき続ける。
それは、母は世界を股にかける諜報部員で、重要な任務をやり遂げるために家になかなか帰って来ないというスケール感溢れるもの。グロリアが母に送るメールアドレスも、実はサミュエルが管理しているもの。それをFacebookメッセンジャーを通じてクリスティンに転送し、たとえ既読にならなくても「いつかグロリアの気持ちが届くように」とウソをつき続けるサミュエルの優しさが胸を打つ。

 しかし、そのウソもクリスティンが現れればバレてしまう。サミュエルはグロリアから笑顔がなくなる日を何よりも恐れ、多くは望まず、「明るく、楽しく」をモットーに日々を過ごす姿に元気をもらえる。