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  • 2017.09.09

急に父になった遊び人がついた世界で一番優しいウソ『あしたは最高のはじまり』

独身生活を謳歌する遊び人・サミュエルのもとに、かつて関係を持ったクリスティンが「あなたの子よ」と赤ん坊を差し出し姿を消す。突然父親になったプレイボーイは異国の地・ロンドンで子育てに奮闘する——。フランスで大ヒットを記録したヒューマン・コメディ。

「あしたは最高のはじまり」の画像
Julien PANIÉ

 人が大人になる瞬間とは、どのタイミングを指すのだろうか。

 赤ん坊を預かることで、“遊び人”が突然父親になり、大人になる…ただそれだけの映画ではなく、彼がつき続ける“ウソ”が少女を笑顔にする。子どもと子どもが一緒に成長していく姿が微笑ましく、やがて涙を誘う。

 『最強のふたり』のオマール・シーが主演の“遊び人”サミュエルを務め、本国フランスで8週連続トップ10入りを果たしたヒューマン・コメディ。
『人生、ブラボー!』のアントワーヌ・ベルトランが主人公の手助けをするゲイのベルニーを、『ハリー・ポッター』シリーズのクレマンス・ポエジーが姿を消す母・クリスティンを演じる。

サミュエルの優しいウソのスケール感

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Julien PANIÉ

 毎晩毎晩、別の女性を取っ替え引っ替え。その日もベッドに二人の女性を寝かせていたのに、「ガキがガキを育てられるかよ!」とサミュエルはそのベッドに赤ん坊を運んでくる。
ロンドンを舞台に子育てに奮闘するサミュエルの珍道中が笑いを誘い、適当で気ままに生きていた彼が子育てを始めることで生活が様変わりする姿に目が離せない。

 グロリアが母・クリスティンに育児放棄されたという事実に傷つかないように、サミュエルはあるウソをつき続ける。
それは、母は世界を股にかける諜報部員で、重要な任務をやり遂げるために家になかなか帰って来ないというスケール感溢れるもの。グロリアが母に送るメールアドレスも、実はサミュエルが管理しているもの。それをFacebookメッセンジャーを通じてクリスティンに転送し、たとえ既読にならなくても「いつかグロリアの気持ちが届くように」とウソをつき続けるサミュエルの優しさが胸を打つ。

 しかし、そのウソもクリスティンが現れればバレてしまう。サミュエルはグロリアから笑顔がなくなる日を何よりも恐れ、多くは望まず、「明るく、楽しく」をモットーに日々を過ごす姿に元気をもらえる。

「一人前の大人になる」とは?

「あしたは最高のはじまり」の画像
Julien PANIÉ

 大人になり切れないサミュエルはグロリアを育て、またグロリアが彼を大人にさせていく。

 サミュエルが幼少時代、父親に教えられた「恐怖を味わうことで、恐怖を知る」。それは突然“父親という責任”を背負った彼がまさに直面したものだ。
父親の教えの通り、時には「崖から飛び降りる」ことだって必要なのだろう。グロリアを助けるために地下鉄でエスカレーターの間を急降下するサミュエルは、父親の教えをやり遂げた姿なのかも知れない。

 人はそう簡単に変われない。お酒を飲めても初体験をしても、そう簡単に大人にはなれない。
でも、サミュエルは赤ん坊を預かることで大人になった。その時は不幸だと思っても、彼はかけがえのない宝物を手に入れた。
今まで費やしてきた自分の時間も犠牲にして、自分以外の誰かが幸せになることを喜べるようになった時、初めて一人前の大人になれるのかも知れない。

 サミュエルはもう一つ、グロリアに大きなウソをつき続ける。それを知る時、彼が毎日ハイテンションで明るく過ごす理由が分かり、思わず涙を誘われる。

 ゲイのベルニーのいつも前向きな愛情や、サミュエルが生業とするスタントマンの仕事風景など、様々な人間模様がテンポよく綴られる。

 これはグロリアだけでなく、サミュエルの成長記録。毎日続くと限らない“あした”を最高の形で迎えるために、サミュエルと一緒に成長することを笑って泣いて楽しみたいものだ。

ストーリー

 南フランス・コートダジュールで毎日バカンスな日々を送るサミュエル(オマール・シー)のもとに、かつて関係を持った女性クリスティン(クレマンス・ポエジー)が訪ねてくる。連れてきた赤ん坊グロリアを渡し、彼の実の娘だと言ってそのまま姿を消してしまう。

 クリスティンを探すためにロンドンに降り立ったサミュエルは、地下鉄でゲイのベルニー(アントワーヌ・ベルトラン)と出会い、彼に手助けをされて男手二つでグロリアを育てていく。

 やがて8年の月日が流れ、グロリアも大きくなってサミュエルとベルニーとともにすっかり3人家族のように過ごす彼らのもとに、クリスティンが再び現れることに――。



9月9日(土)より、角川シネマ有楽町、新宿ピカデリー、渋谷シネパレス他全国ロードショー

監督:ユーゴ・ジェラン
キャスト:オマール・シー、クレマンス・ポエジー、アントワーヌ・ベルトラン、グロリア・コルストン、アシュリー・ウォルターズ
配給:KADOKAWA
原題:Demain Tout Commence/2016年/フランス映画/117分
URL:『あしたは最高のはじまり』公式サイト

Text/たけうちんぐ

次回は <深く傷付かないと、それは恋愛じゃない。松本潤×有村架純×行定勲で描く正真正銘の“恋愛”映画『ナラタージュ』>です。
大学2年生の泉のもとに、高校時代の演劇部の顧問・葉山から後輩たちの卒業公演への参加を誘う電話がかかってくる。泉はかつて葉山に、強い想いを寄せていた——。松本潤×有村架純×行定勲で魅せる、容赦ない恋愛映画。

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ライタープロフィール

たけうちんぐ
ライター/映像作家
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