• love
  • 2017.10.05

深く傷付かないと、それは恋愛じゃない。松本潤×有村架純×行定勲で描く正真正銘の“恋愛”映画『ナラタージュ』

大学2年生の泉のもとに、高校時代の演劇部の顧問・葉山から後輩たちの卒業公演への参加を誘う電話がかかってくる。泉はかつて葉山に、強い想いを寄せていた——。松本潤×有村架純×行定勲で魅せる、容赦ない恋愛映画。

「ナラタージュ」宣伝画像①
©2017「ナラタージュ」製作委員会

 思い通りにいかない。失恋は心を抉られる。そのすっぽりと空いた穴を埋めるように、誤魔化すように“余生”を過ごす。
そこには歓び以上に哀しみが身を覆い、決して綺麗事では済まされない。

 ヒロイン次第で世界が思うように動くような、ご都合主義の恋愛映画にウンザリしている方に朗報です。
このヒロインたちは深く傷付き、嫉妬に苦しみ、大泣きする。これは現実世界の恋愛に真っ向勝負で挑んだ、正真正銘の“恋愛”映画です。

 作家・島本理生が20歳の頃に書き下ろし、今もなお恋愛小説のマスターピースとして名高い原作の映画化企画を、10年あまり温めてきた行定勲監督が満を辞して実現させた。

 監督に「10年待った甲斐があった」と言わしめる、『陽だまりの彼女』以来4年ぶりの映画主演となる嵐の松本潤、NHK連続テレビ小説『ひよっこ』の有村架純と理想的なキャストが集結した。

恋愛偏差値が試される、“壊れる”恋愛模様

「ナラタージュ」宣伝画像②
©2017「ナラタージュ」製作委員会

「壊れるくらい、あなたが好きでした。」

 ――本作のキャッチコピーの通り、一生に一度の全身を焦がすような恋愛がここでは描かれる。が、そこに甘さがまるでない。観る者の恋愛偏差値が試されるかのように、キャラも性質も吹っ飛ばして本当に“壊れる”姿がそこにある。

 泉(有村架純)が高校時代、居場所を高校時代の恩師・葉山(松本潤)に見つけたように、葉山もまた隠し切れない自らの弱さを、泉に支えてもらった。
恋なのか情なのか、性愛なのか信頼なのか。判別できない心の有様のまま、互いに惹かれ合う姿が曇天の雨とともに映し出される。

 ベストキャストとしか思えない。松本潤は逞しさとともに、どこか陰を含む危うさが滲み出す。一方、有村架純は不安定な少女を匂わせながらも、力強い眼力で頼り甲斐のある演劇部の先輩として佇む。

 キャラクターたちがたった一面ではなく、多面的なものとして捉えられている。頼る者・頼られる者の関係性が時に逆転し、泉は母親のように葉山の弱さを受け止め、葉山は子どものように弱さを見せる。

恋愛は快感が得られる分、副作用が恐ろしい

「ナラタージュ」宣伝画像③
©2017「ナラタージュ」製作委員会

 少女漫画原作の恋愛映画でありがちなことが、ヒロインを奪われた脇役の男がいとも簡単に諦めて、想いを寄せていたはずの彼女の新たな恋愛を応援すること。

 そういう意味では、葉山への嫉妬心に蝕まれる怜二(坂口健太郎)の描き方がありがちな綺麗事を消し去ってくれる。彼は恋愛映画ではあくまで“脇”の悪役として描かれがちだろう。だが、本作では怜二の後輩を思いやる一面も、実家では気のいいニイちゃんであるという一面もきちんと映し出される。

 誰もが容赦なく性質を炙り出され、善も悪も取っ払って感情的にさせてしまう。恋人を大切にすればするほど、裏目に出ることがある。快感が得られる分、副作用が恐ろしい劇薬のようだ。

 欲望が先走りして、何が正しいか分からなくなって、自分のことが嫌いになる。脇の甘い恋愛映画がないがしろにしていた、“脇”に全く甘くない恋愛の最も核となる部分を本作は容赦なく切り取っている。

「恋愛は素晴らしい。」なんて映画作品が謳う時代は、もう終わったのかも知れない。
「恋愛は素晴らしい。だけど苦しくて死にそうになる。でも素晴らしいところもあるっちゃある」と、この作品は変えてくれるだろう。

ストーリー

 大学2年生の泉(有村架純)は高校時代の恩師・葉山(松本潤)から電話がかかり、演劇部の卒業公演の参加に誘われる。

 高校生の頃、学校になじめなかった泉に演劇部を勧め、救ってくれたのは葉山だった。密かに想いを寄せていた泉は、卒業式の日の葉山とのある思い出を胸に秘めていたが、再会することで抑えていた感情が蘇っていく。

 そして葉山もまた、泉への複雑な気持ちを抱いていた――。

10月7日(土)全国ロードショー

監督:行定勲
原作:島本理生(「ナラタージュ」角川文庫刊)
キャスト:松本潤、有村架純、坂口健太郎
配給:東宝、アスミック・エース
2017年/日本映画/140分

Text/たけうちんぐ

関連キーワード

ライタープロフィール

たけうちんぐ
ライター/映像作家
今月の特集

AMのこぼれ話