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  • 2017.03.01

「恋愛って人をバカにしてくれる、それってきっと大事なバカさだと思う」とことん恋愛を肯定する24歳女子の強さ

初めましての女子たちと酒を飲みつつ恋バナしちゃうこの連載もとりあえずの最終回。人生で一番好きだった人の死も、男に軽く扱われがちな自分も乗り越えて、前に進みはじめた24歳のあさこちゃん。彼女が恋愛を肯定し続けられる強さの裏には、とことん人と向き合ってきたこれまでの人生があった。

poiboy 舘そらみ
©Poiboy

 駅前でスケッチブック掲げて「奢るから一緒に飲んで!」なんて言ってくる人、どう考えたって怪しい。
でも人と人との出会いなんて偶然で、何十人かのうち一人くらい「いいですよ」って人が現れる。日頃からそういうのに応じがちな人かっていうとそうでもなくて、なんだかきっと、タイミングってやつだ。

 冬空の錦糸町。あさこちゃん24歳は、元カレと別れて3年、そしてその彼氏を亡くして半年。ほんの少しだけ、恋愛に心が向かい始めていた。

路チューで気づいた、自分の立ち位置

「元カレがいなくなって初めていいなって思える人ができたんだけど、また既婚者だった。浮気なんてしそうにない感じが好きだったから本当に何も求めてなかったのに、この前路チューされちゃって…

poiboy 舘そらみ
©Poyboy

 あさこちゃんはその既婚男性を、“人として”好きだった。だから一線を越えたいとも思わず、2人で飲みに行っては娘さんの写真を見て、家族の話を聞いていた。
でもそんな飲み会の帰り、信号待ちの路上で突然キスをされた。

「キスしてくる瞬間のその人の顔が、あまりにもいつもと違っててすごい衝撃だったし怖かった。“出たよこれ!世の中こういうことばっかしだよね!”て思ってすごい悲しくて、ちょっと人間不信になった。」

 そういうつもりじゃなかったのにそういうことをされたショック。
大なり小なり女性陣は経験していることだろう。そのショックと絶望を言葉にするのは難しい。
相手のことを信頼してればしてるほどにそのショックと絶望は大きく「思わせぶりかもしれない行動をしていた自分」を土に埋めたくなり、ステキに思えていた時間は全て灰色に変わる。

「やっぱり私は浮気相手にされちゃう運命なのかと悟ったんだよね。酔った勢いで既婚者に路チューをされるような女なのかと、つくづく感じちゃって」

 そういうちょっとした男の無意識の扱いに、女たちは自分の立ち位置を知る。だって、私がガッキーだったらこんな扱いしないでしょ。
そういう立ち位置なのかと知ったら、男性に期待するのが怖くなって、更にそういう風にしか扱われなくなって…の堂々巡りだ。
「でもね、そんな時にね」とあさこちゃんの声色が、少し明るく変わる。

「もう本当に私アカンな、愛人の道しかないんだなと諦めかけた矢先にね……! 面白くてかっこいい人だなーって思ってた独身の男性から、ご飯に誘われたんです!!!!!」


自信を取り戻させてくれた、健全な恋の予感

 その彼とはご飯に誘われただけで、まだ行ってはいない。日程を調整しているような段階だ。でも。

「メールで丁寧に日程合わせたり、場所の相談したり。そういう、健全な始まり感がすごくうれしくて!!

 満面の笑みであさこちゃんは語る。

「その人に誘われたおかげで気を取り戻したって感じ。だから、まあどうなるかなんてわかんないけど、なんかあったらいいなーって思ってる」

 例え今まで色んな恋愛経験を重ねてても、一人の男性から誠実にご飯に誘われるだけで実にうれしいものだ。
いや、色んな経験を重ねてきたからこそ、誠実に扱われることは女としての自尊心を取り戻させてくれる。

専業主婦になりたい願望

 ある1人からのご飯の誘いで気を取り戻したあさこちゃんは、“自分も夢を見ていいんだ”という当然のことも取り戻した。

「もう結婚してる男は選びたくないの。だって、不倫で始まった関係はその先がない。奥さんと離婚して、今度私と結婚して…そんな失うものが大きすぎることを男が簡単にやるわけがないから」

 不倫を重ねてきたあさこちゃんが、冷静に語る。そう、不倫に惹かれる自分のことも、そこに未来がないことも彼女はわかっている。

「専業主婦になりたいの。パートでスーパーのレジをやりたい」

その理由はこんな風だ。

「暇がダメなの。主婦って休みがなくて、やろうと思えばどこまででも仕事があるでしょ?多分それすごい私に合ってる。それにインドア派だから、おうちのことをするのは全然苦にならないんだよね」

 専業主婦になりたい女子は実は少なくないと、この企画で学んだ。
一生働きたい代表の私と編集部Oは、他人事かのように「専業主婦が欲しい男もいるんじゃないの?」なんて適当に口に出した。「いやいないよ!そんな甲斐性ある男いないんだよ!」と激しい口調が返ってきた。

「昔だったら、奥さんに働いてもらうのは自分の稼ぎが少なくて情けないことだったはずが、今は奥さんに働いてもらうのが当たり前になってるのはすごい辛い。しかも“働きたいでしょ? 働いていいよ?”みたいな言い方してくるでしょ? それは違うよーって思う」

 こんなこと男が聞いたらどう思うんだろうねー? と、かなりお酒が回った女4人で首をひねった。

「でも本当は、こんな、専業主婦になりたいなんて願望を忘れるくらいの人が来たらいいな。あれ、私専業主婦なりたいって言ってた?くらいな」

 本当にそうだ。「こういう人と結婚したい、こういう人とは結婚したくない」なんてよく語るけど、そんな願望がどうでもよくなっちゃう人と出会えたらいいよね。「○○が気になる」「○○が合わない」そういうのを、忘れさせてくれる人と、恋ができたら最高だよね。

≫夢中になれる恋をしよう≪

恋愛は、大事なバカさを与えてくれる

 終電も近くなり、「二軒目一緒に行こうよー」と絡んでくるサラリーマンがとうとううるさくなった頃、全員にしている質問をしてみた。……あなたにとって、恋愛って何ですか?

「恋愛は…人生の飾りかなあ。別に恋愛しないでも全然生きていけるけど、それだと全部自分で考えて、自分の理由で自分の人生を決めなきゃいけないじゃない?」

 あまりにも含蓄のある言葉が始まったので、真剣な面持ちであさこちゃんを見つめる。周りの忘年会たちとは比較にならない真面目さが女たちに流れる。

「でも恋愛があると、一緒にいたいからここに住もうとか、あの仕事をしようとか休日は合わせようとか、自分の道が変わっていく。その人のために何が出来るかなあとか、毎日の考え方も変わっていく。一人の殺風景な人生よりかは、恋愛っていうデコレーションがあって生きてた方が、いいかなあって思うんだよね

 ホントにそうだね、となんの異論もなく頷いた。連載の最後に、マジでいいこと言ってくれるわ。

「今一人で淡々としてるからこそ、そう思う。恋愛って人をバカにしてくれるから。そのバカさってきっと必要な、大事なバカさなんだと思う」

 あさこちゃんらしい発言だった。真面目だけど、くそ真面目じゃない。
力の抜き方も知ってて、広い視野を持っている。学校の外でずっと生きてきて、たくさんの人と向かい合ってきた強さを感じた。

「これから、何にでもなれるし。どんな道も選べるし。私は、まだ、若いもん」

 そうだ、24歳。まだまだ若い。元カレが亡くなっても、彼女の人生は続くんだ。

 その人にはその人だけの人生がある。今のその人を作り上げた、人生がある。
それがどんな人生だったかなんて、過ぎ去った今は実は誰も分からない。
本人だって実は、自分が生きてきた道のりがどんなだったかしっかりととらえてたりしない。
「そうありたかった過去」や「今の自分の気分に応じた過去」を知らないうちに選び、作り上げ、語っている。

 だからこそ、人の人生の話はこんなにも面白いんだなあと、つくづく感じる。
今目の前にいる人も、階段ですれ違う人も車内の人も、全員当たり前だけど過去があってドラマがあって、取り巻いてきた人びとがいる。
そんなことおくびにも出さず、街を歩き電車に乗っているけれど、みんなみんな決して戻れない過去がある。
そんな当たり前のことを感じさせる、幸せな企画だ。

「初めましての恋バナ図鑑」、今回でちょっと一応のおしまい。
また、どこかの土地で、「飲みませんかー?」と声をかけ、ドキドキしながら杯を交わしたい。そして、お互いの人生を、大声で大笑いでシェアしたい。
今までありがとうございました。あなたとも飲んでみたかったな。待ちゆく人のリアルな恋バナがここにある…。かんぱーい!
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ライタープロフィール

舘そらみ
脚本家・俳優。1984年神奈川県生まれ、トルコ・中米育ち。映画「私たちのハァハァ」の脚本を執筆。Twitter:@_sorami

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