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  • 2017.02.04

「今でもよく思い出すし、ちょっと後悔してる」元カレを亡くした24歳女子の忘れられない恋

花金の錦糸町で出会ったのは、人生2社目の会社をまさに昨日退職したあさこちゃん。「惹かれる人は基本的に既婚者」なんて悲しいセリフを堂々と吐いちゃう彼女の、人生で一番好きだった人との恋愛を聞きました。「亡くなっちゃったんですけどね」とあっけらかんと語る、ドラマチックな恋愛とは……?

poiboy 舘そらみ
©Poiboy

 年末の錦糸町。激サムな外はなんのその、偶然入った和食居酒屋ではどのテーブルも忘年会で盛り上がっていた。私たちのテーブルも、初対面同士の飲み会とは思えないほどに意気投合し、ハイペースにお酒を重ねていた。

 今回の恋バナの主人公は、あさこちゃん24歳
どちらかと言うと童顔だが、落ち着いた知的な口調が年より大人に見せている。「学生の時から付き合ってる彼氏がいて、もうすぐ結婚するんです」なんて堅実な言葉が似合いそうなのに、真実は中学の時から浮気男に翻弄される恋愛を重ねていた。
「惹かれる人は基本的に既婚者」なんて悲しいセリフを堂々と吐いちゃう彼女の、人生で一番好きだった人との恋愛を聞いた。

もうこの世にはいない、人生で一番好きだった彼

poiboy 舘そらみ
©Poyboy

 ったく、どんな不倫をしてきたのさ! とヘラヘラと問うと、

「前の会社の役員だった人。自分が付き合ってきた中で一番人として素敵な人だった。亡くなっちゃったんですけどね

 え……予想外の返答に、まわりの反応が消える。
全員でマジマジとあさこちゃんの顔を見つめるが、表情は読み取れない。

「あ、大丈夫ですから! 付き合いはじめた時から彼ががんであることは全然知ってたんで。どころか、初めて出会ったときから彼は既にがんで、そのことを公表してたんで」

 あさこちゃん24歳の一世一代の恋は、不倫で、会社の上司で、そして末期がんで、もうこの世にいない人だった。

小さいお子さんもいたけど、私と関係を持ち始めてすぐに離婚して。付き合ってる時も入退院を繰り返してて、私の誕生日も一緒に病院で過ごしたりしましたね」

 元カレは、20歳の時にがんを発病し、就職をした。病気であることはみんな知っていたが、勤勉な働きと誰からも愛される人間性が評価され役員にまでなった。そんな時に入社してきたのがあさこちゃんだった。「奥さんも小さな子供もいて、余命宣告もされていて、それでも一緒にいたかったの?」と控えめに聞いてみた。だって踏み込むには辛いことが多すぎる相手だ。

「信じられないくらいいい人だったんです。会社の中でも人気で……後輩にもすごい慕われてて、社長もすごい信頼してて。だってがんを持ってて、入院するような人に役職なんて与えないじゃん、普通」

 話すスピードが加速する。辛さを隠しているのか、思いが募ってつい饒舌になるのかはわからない。

「すごい人だったんだなあって最近特に思うんですよね。仕事もギリギリまでやってたし、男性としてもちゃんとしてたし、必死に生きようとしてた。死ぬ人だっていうことを、まわりもつい忘れてしまうくらいに。ものすごい尊敬もしているし、そんな人に会えたのはうれしかったですね」

 あさこちゃんの彼への熱量が伝わってくる。当然ながら元カレもすごい人だったのだろうが、横で見ていたからこその、圧倒されるほどの説得力があった。

「転移する度にちょこちょこ切って。そんな入院がどんどん増えてきて、最終的には切除する部分がなくなったと。だからがんが転移しても、もう切除はできないっていう状態になって。9年の闘病の末、29でこないだの夏に亡くなっちゃった」

「さいご、会いたかったですけどね」と小さく続ける。わー看取れなかったのか、と同情を禁じ得ない。辛い、辛すぎる。
誰が看取ったの? の問いに、驚くべき返答が返ってきた。

「彼女。私の次の。」

 ……はい!?
そう、あさこちゃんは最愛の元カレと、実は亡くなる前に別れていた。なんでやねん!!
人間って、本当に奥が深い。
≫踏み込んで恋をしよう≪

最後の瞬間、他人でしかなかった後悔

「付き合ってる時に、彼氏が今まで家族と住んでいた家から引越すってなって、身体のこともあるし一緒に住んでくれたらうれしいって言われて。でも私そのときまだハタチで、家を出るってことも、しかも同棲なんて親に言えなくて。じゃあ私は彼にどこまで何ができるんだろうって思ったら怖くなっちゃって、一緒に住むことを断っちゃったら、会えることも減っちゃって、なんとなく終わっちゃって」

 あさこちゃんがまだ若いことを忘れていた。ハタチ……そうかもしれない。ハタチの時に家を出て同棲をするだけでも親には言いにくい。ましてや「家族には心から感謝している」と自然に言えるあさこちゃんだ。相手はバツイチの余命宣告を受けている人だなんて、親のことを思えば言いにくいのは当然なように思う。
そしてまた、彼との同棲を躊躇してしまう自分が、一体彼に何が出来るのか不安に思うのも当然だろう。これが、勢いでバーン!っていけるタイプの人ならまた別だ。
でも彼女は、まわりに気を配り続けてくれる人だ。

「その後、新しい彼女ができたことは聞いてて。そう、めちゃめちゃモテるんですよ。とうとう無期限入院になったことも聞いてて、会いに行きたかったんだけど、なかなか勇気が出なくって。でも、やっぱ行くしかないって思った矢先に亡くなったことを聞いて。早く行けばよかったなあっていう」

 そうか……としか言葉が出ない。そうか……。

「余命宣告も何度も更新してたし、倒れても倒れても復活してたから、あの人は大丈夫だろうなって勝手な安心感もあった。どうせまだ生きてるんでしょう? っていう。なんか、そうだな………」

 あさこちゃんの次の言葉を、みんなで待つともなく待った。

今でもよく思い出すし、ちょっと後悔してる

 あさこちゃんを慰めるように、みんなちょっぴり笑う。多分とっても後悔してるだろうに、「ちょっと後悔してる」なんて表現を使うあさこちゃんのいじらしさを受け止めた。

「あの頃ビビらずにいけばよかったのかな、って結構思うし、会いたかったなあと思うなあ…会いたかったですよね。会えないですから、もう」

 最後まで思いを通わせられて見送れたら(もちろんそれでも本当に辛いだろうが)また違っただろう。でもあさこちゃんは怖気ついて逃げちゃって、そのまま彼はいなくなってしまった。彼はあさこちゃんの思いをどれだけ知っていただろう。次の彼女とどんな恋愛をして、どんな風に亡くなったんだろう。それは、あさこちゃんも知らない。

「でもそういうのも人生なのかなあって思う。…っていう風に片付けるしかないと思って!」

 言葉を失ってかすかな笑みを浮かべるしかない私たちを気遣うように、あさこちゃんは妙にサバサバとした口調でそう言った。
幸せになろうねーと、みんなで小さく乾杯した。「いやホントそうですよ!」とあさこちゃんは答えた。

 人には歴史アリ、だ。錦糸町で飲む、このスレンダーで童顔な彼女がそんな過去を持っているとは、いったい誰が思うだろうか。
表に出ているだけがその人じゃないし、自分の理解できる部分だけがその人でもない。本人にだって説明のつかない感情だっていっぱいある。人間一筋縄じゃいかんのよ、ということをこの連載は教えてくれるなあ、なんてシミジミとする。
あまりにも大事な過去を聞いたので、あさこちゃんが好きでたまらなくなってしまった。

既婚者に惹かれる欲求を、抑えたい

 彼と別れて以降、あさこちゃんは彼氏を作っていない。
発展しそうなこともあったが、どうにもその気になれなかったという。そこで出てくるのが、

未婚な人のあわよくば感がダメで。既婚者の落ち着きがよくて

 という前回語ってくれた考え方だ。
人生で一番好きだった人が不倫だったら、そりゃ不倫を否定する気にはならないよなーと、思う。猛烈に好きだった人にまつわることを嫌いになるのは難しい。
ましてや元カレは、もう決して更新されない大切な思い出としてしまわれてしまった。それを覆すのは難しい。

 でもあさこちゃんは実は結婚をしたい。
そして、家庭をちゃんと守りたいと思っている。

 大好きだった彼氏と別れて3年、その彼氏が亡くなって半年、あさこちゃんは久しぶりに今、男性としっかり向き合いだしている。
既婚者に惹かれてしまう自分の欲求を、初めて抑えようともしている。

 次回、自分が幸せになるための恋のスタートラインに立とうとしているあさこちゃんの、揺れる心。
そうして実は、この連載は一度おしまい。
あさこちゃんが最後に語ってくれた「恋愛とは私にとってなんなのか」の言葉で次回、幕を下ろします。

 待ちゆく人のリアルな恋バナがここにある…。
そう、あの人にも、この人にも。きっとあなたの恋愛人生も、十分にドラマチックで人間的だ!
≫ドラマチックな恋をしよう≪

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 AM編集部がプロデュースした女の子からはじまる恋愛応援アプリ「Poiboy」がリニューアル!(※iOS先行配信中) 女性主導はそのままに選び方が「二択」に変わりました。表示される2人の男性から気になる方を次々選んでいく直感方式がクセになる!ちょっとした気持ちの選択から、思いもよらない素敵な恋がはじまるかも……!

次回は <「恋愛って人をバカにしてくれる、それってきっと大事なバカさだと思う」とことん恋愛を肯定する24歳女子の強さ>です。
初めましての女子たちと酒を飲みつつ恋バナしちゃうこの連載もとりあえずの最終回。人生で一番好きだった人の死も、男に軽く扱われがちな自分も乗り越えて、前に進みはじめた24歳のあさこちゃん。彼女が恋愛を肯定し続けられる強さの裏には、とことん人と向き合ってきたこれまでの人生があった。

ライタープロフィール

舘そらみ
脚本家・俳優。1984年神奈川県生まれ、トルコ・中米育ち。映画「私たちのハァハァ」の脚本を執筆。Twitter:@_sorami

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