• love
  • 2017.09.28

もし彼がハイスペでも、私は今「中途半端」なキャリアを手放せない

結婚したら寿退社して専業主婦になる!そんなロールモデルが機能しなくなった現在、でもキャリアを高めるために”男並み”に働く気力もない。ハンパに積み上げたアラサーとしてのキャリアをぽいっと捨てられるほどの愛は、はたして今後叶うのでしょうか?

将来の夢は「お母さんになること」

結婚にまつわるキャリアの選び方に悩む女性

 わたしのキャリアをひとことで言うと「中途半端」だ。就活も仕事もそこそこ頑張ってきたけれど、バリキャリを名乗るには足りないし、腰掛けだと割り切るにはのめり込んでしまっている。

 覚えている限り、わたしが最初に抱いた将来の夢は「お母さんになること」だった。当時のわたしは幼稚園生で、母は専業主婦だったから、5歳にして専業主婦を目標としていたことになる。こう書いてしまうと可愛げがないが、幼いわたしにとっての専業主婦は、お花屋さんやケーキ屋さんと同じように望んで就くべき職業だった。
同じような女の子は何人もいた一方で、「お父さんになりたい」と言う男の子はいなかった。彼らにとっての職業はサッカー選手や消防士であり、「お父さん」は意識して目指す職業ではなかったのだろう。

ハッピーエンドじゃ終わらない

 セーラームーンを夢見た女の子たちも現実を見るようになるにように、わたしもいつまでも専業主婦にこだわっていたわけではない。小学校に上がる頃には動物園の職員になりたかったし、中学の頃はイラストレーターになりたかった。
憧れる職業はコロコロ変わっても、一貫していたことがひとつある。思い描く「働く自分の姿」が常に20代のわたしであったことだ。30代、40代の自分が第一線で活躍しているイメージがどうしても湧かなかった。30代以降の自分は、当たり前に家庭に入って子育てに奮闘していると信じていたのだ。

 社会人として働きだしてから、様々な夫婦を見てきた。羨ましくなるカップルもいれば、泥沼の離婚劇を繰り広げたふたりもいる。結婚はゴールではないと思い知らされた。  

 冷静に考えれば、結婚前より結婚後の人生の方が長いので当たり前である。わたしの想像力が及ぶのが、結婚というわかりやすい目印までだったというだけだ。
それはおとぎ話の「王子様とお姫様はいつまでも幸せに暮らしました♡ハッピーエンド♡」に近い。幕が下りた後の生活は「幸せ」のひとことでまとめられている。素敵な王子様と結婚したシンデレラは家事と育児のストレスで泣き暮らすことはないだろうし、白雪姫は王子との性格の不一致にも、セックスレスにも生涯悩むことはない。眠り姫は産後に浮気をされたりしないだろう。

 でも、残念だけれど、現実はどれも起こり得る。なぜならここは架空の国ではなく不景気の日本だ。魔法はディズニーランドにしかなく、頼りになるのは電波とスマホ。そんな時代に生まれてしまったのである。

プリンセスの条件は、信じる心と寿退社

 20代前半のわたしが仕事を続ける自信がなく、結婚に逃げたくなって失敗したことはこの連載の中でも書いた
あの頃結婚していれば、わたしは迷いなく仕事を辞めて専業主婦になっただろう。けれど、今ならどうだろう。もしじゅうぶんな収入の男性と結婚することになったとしても、仕事は辞められないと思う。この仕事はわたし以外にはできないから……なんて言えればかっこよかったのだが、もっと現実的で切実な話だ。わたしは経済的な自立を手放す勇気を失っている。お城を追い出された時や、お城に嫌気が差した時のことを、いやでも想像してしまうのだ。

 今から2年ほど前、知人の女性が結婚した。彼女は非常に優秀で、わたしの中ではバリキャリの象徴でもあった。今の恋人との結婚を視野に入れているとは聞いていたけれど、わたしも周りも、彼女は結婚後も働き続けるものだとばかり思っていた。だが、結局彼女はあっさり仕事を手放して、はるか遠くのりんご農家に嫁いでいった。
「不安もあるけど、彼と家族を信じるよ」と笑った彼女に、コンプレックスが刺激された気がしてわたしはなんだか恥ずかしくなった。中途半端なキャリアにしがみつくわたしと、もっと大きく高く積み上げたキャリアをぽいっと捨てられる彼女。そうできるだけの愛が彼女にはある。専業主婦ではないけれど、たぶん、そういうものこそが、幼いわたしが憧れていた結婚だった。

 twitterを見ていると、時折「ハイスペと結婚して専業主婦になる♡わたしのシゴトはワンちゃんのお世話と習い事♡」なんてキラキラしたツイートが流れてくることがある。先の知人女性と種類は違うが、相手を信じてすべてを賭ける度胸と純粋さを眩しく思う。
現代のプリンセスは、迷うことなく寿退社ができる女の子なのかもしれない。

 プリンセスになれないし、そもそも結婚の予定もないわたしは、本日木曜も死にそうな顔で満員電車に揺られている。

Text/白井瑶

次回は <「普通の人がいい」・・・好みの人に飛び込めていたあの頃にはもう戻れないのか>です。
恋人に求めるものは千差万別ですが、中でも多く耳にするのは「普通の人」という答え。しかし、「普通」と判断する基準は曖昧で複雑です。年齢によって変化する価値観と思い描く未来。あの頃の「好きなら何でも許せる」ような恋愛はどこへ行ったのでしょう。

ライタープロフィール

白井瑶
ゆとりのアラサーOL。
今月の特集

AMのこぼれ話