はあちゅう×林雄司対談

インターネット時代に生きる私たちの恋愛/はあちゅう×林雄司

インターネットを手軽に使えるようになり、「インフルエンサー」と呼ばれるネット上で影響力を持った人が存在する現代。その先駆けである、はあちゅうさんと、デイリーポータルZ編集長林雄司さんに、これからの時代における「成功」や「恋愛」について伺いました。

私たちの成功の形と恋愛のヒント

左から)インタビュアーの紫原さん。そして、はあちゅうさんと林さんに対談していただきます。

 こんにちは、今回インタビュアーを務めた紫原明子です。
数年前、日本のインターネット史に詳しいある人がこんなことを言った。

「ネットには定期的に目立つ女の子が出てくるの。みんな最初のうちはチヤホヤされるんだけどね、結局は消えちゃう。もしくはオジサンたちに潰されちゃうんだよ」

 そんな時代もついに終わった…と私たちが確信とともに言えるのは、この人が傷だらけになりながら道を作ってきてくれたからだ。
はあちゅう。
度重なる炎上を経ても決して消えることなく、重鎮オジサンにも潰されることなく、若い女性達のロールモデルとして、インターネットで輝き続けている。

 彼女の存在はまぎれもなく私たちの希望だけれど、同時に悩ませもする。
“私たちは彼女のように強くなれるのだろうか?”
先人たちの活躍によって、私たちが自由に、自分らしく生きることは、以前よりずっと容易になった。であればこそ、これからの私たちの成功の形、恋愛の形には、もっともっとバリエーションが増えてもいいんじゃないだろうか。

 実は、私は長らく「デイリーポータルZ」の女性版とも言えるメディアがどうして誕生しないのか、ということをずっと考えてきた。
実用性の高い情報が溢れているわけでもなく、見て欲しいという押し付けがましさもない。オジサンたちが中心となって、工作したり遊んだりする記事を、私たちはどうしてあれほど見たくなるのか。見たあとに、幸せになってしまうのか。あの空気に憧れ、ああいう生き方をしたいと思う女性だって、きっと少なくないんじゃないだろうか。そしてそれは、はあちゅうの体現する生き方とは対局にあるもののようにも思う。

 そこで今回、はあちゅうさんとともに、デイリーポータルZ編集長林雄司さんにお話をうかがった。ふたりの考えをトレースすることで、私たちのこれからの成功の形や、恋愛のヒントを探る。

自意識を発散できる時代

紫原明子(以下、紫原)
SNSを使いこなすのが当たり前になって、はあちゅうさんのようなインフルエンサーに憧れる女の子が、最近ますます増えてきているように感じます。
まず、はあちゅうさんご自身は、この現状をどういうふうに見ていますか?
はあちゅう(以下、はあちゅう)
率直に言うと、うらやましいなあと思います。
私、大学時代は読モになりたかったんですよ。読モやカットモデルさんがすごくうらやましくて、いつか紙の媒体に載りたいっていうのがブログをはじめたきっかけのひとつでした。
でも今は、ツイッターやYouTubeでフォロワーが多ければリスペクトを集められる。文章でも、写真でも、動画でも、自分の個性に合わせた発信方法で、色んな人が活躍できますよね。私が学生だったときよりも、もっと自由に自意識を発散できる、いい時代だなと思います。
紫原
「自意識を発散したい欲求」というのは、みんなが持っているものだと思いますか?
はあちゅう
みんなが持ってると思います。ただ、SNS社会の中で余計に引きだされているところはあるかもしれません。
自意識を発散することはできるけど、ネットでは、フォロワー数がドラゴンボールのスカウターみたいに、その人自身のパワーとして評価される。センスにしても可愛さにしても数値化されるので、他人と簡単に比較されますよね。それを生きづらいと感じる子もいるかもしれません。
林雄司(以下、林)
僕らが大学生だった90年代はインターネットがない時代でした。“おれは友達多いぜ”って言っても、リアルな人数をわざわざ数えたりしなかった(笑)。ところが携帯電話の出現で、メモリ数が実際の友だちの数として可視化されたり、今は面白さが「いいね」やシェア数で数値化されますね。
インターネット以前は、わりと漠然としててよかったなぁって。みんな同じ冗談を平気でパクってました。
紫原
今は“ハッタリ”が効かなくなってるんですね。
はあちゅう
全部アーカイブされるので、“キャラ変”がしづらいっていう問題もあります。
たとえリブランディングしても、大学時代とか過去の発言を引きずってしまうので、一度アウトなことを言うと、ずっと消えずに残ってしまう。
あれいやですね。みんな、失敗に厳しい社会はよくないとか言うくせに、相撲協会にはやたら厳しいじゃないですか。
紫原
たしかに(笑)。人を糾弾するのって気持ちいいんですかね。
はあちゅう
そうだと思います。糾弾したり批判したりすることで、こんな難しいことをRTする私、理解できてる私、というように、自分を大きく見せるような気持ちになれる。それに炎上に意見すると、参加してる感も持てるんですよね。
評論家の宇野常寛さんがネットの最近の空気を「いじめエンターテイメント」っておっしゃっていました。テレビのワイドショー番組では今週のいけにえはこれ、今週のいけにえはこれって、誰かに石を投げるのが当たり前になってますよね。
それが今はネットに移ってきちゃって。止める人もいないからどんどんどんどん加速していく。みんながそれですごく気持ちよくなっちゃってる、という話です。私も、同じことを感じています。
はっきり言ってイギリスがEU抜けるのとかって俺らにはたいして関係ないことじゃないですか(笑)。でも、ニュース見て、SNSがあって、それに意見できちゃうと「EU語っちゃう俺」という「俺特別」感が生まれるから、手軽に気持ちよくなれるんでしょうね。