女性は変身に慣れている

紫原

そういう、ネット上での「俺特別」感への欲求って、男性も女性も同じように持っているものでしょうか?

はあちゅう

根本は男女とも同じだと思います。……が、ツイッターでの発言とリアルに会ったときとで、すごくギャップがある人っていうのは、特に男性に多い気がしています。

紫原

え、そうなんですか。それはどうしてでしょう。

はあちゅう

うーん、安易かもしれないですけど、ひとつは女性のほうがお化粧やファッションで、普段から変身し慣れているからかもしれません。
だから自分の延長上でちょっと大きく見せたり、ちょっとひねったりすることが自然にできるのですが、男性には変身の機会が少ないですよね。そうすると、インターネットを魔法の杖のような変身の道具として使いたくなっちゃうのかもしれない。

「変身してるぞ!」って、頑張った感じになっちゃう。

紫原

なるほど。そう言われてみると男性向けコンテンツって、変身して最強になる系が多いですね。それに男性は友達との付き合いも、もしかすると女性より少ない? 付き合う友達によっても女性って微妙に変わるので、小さな“変身”をしてると言えるかもしれません。

成人男性、友達少ないですよね。ちなみに、男性は高校時代に買うようになったワックスとか化粧品を大人になってもずっと使うらしいです。変身しなれてないし、アットコスメも読まないしね。

はあちゅう

とはいえ女性も、SNSで身の丈以上の自分に変身しようとして痛い目を見ることはあります。「いいね」を得るために無理してブランド品を買っちゃったり、自分の理想に引っ張られすぎて、そっちが本物の生活みたいになっちゃったりとか……。

それは俺も。元々外に出ないタイプなのに、デイリーポータルやってると、記事にするために変なもの買ったり、変なことしたりしますね(笑)。

インターネットと恋愛について

紫原

お話を聞いていて、SNSってやっぱり、その人の自意識や自己愛を露骨に映し出すので、ある意味こわいツールだと思うんですけど、そういったツールがある状態で恋愛するっていうのは難しくないですかね。
たとえば、相手のFacebookとかInstagramをみて「この人、自分のこと好きなんだな〜」って引いちゃうこととか。

それはありますね。自撮りするにしても“たまたま自分が写っちゃいました”ぐらいの感じにしとけばいいのになって思います。
俺、昔ふざけて水道修理会社のマグネットを自分の写真で作ったことがあるんですよ。

本当を言えば、俺も自分が大好きなんで、なんとか出したいんです。でも、なにか逃げ道が欲しいですよね。ウケたいから作ったとか、やってみたかったという言い訳が。

紫原

自己愛を直球で投げるのでなくて、ちょっと笑わせてあげようかなっていうサービス精神を付け足すってことですね。
……でもそこまで気が利いてる女性ってどうですか? まだちょっと恋愛対象としては許容されにくいところがあると思うのですが。

たしかに、ちょっと芸人っぽいなと思われるかもしれません(笑)。でも俺はそういう人にすごいぐっときますけどね。

はあちゅう

そうそう。なので、SNS越しに見える自己愛のレベルとか、どう表に出すかといったセンスは、家具のセンスや本のセンスと同じように、恋愛の相手を選ぶひとつの基準になると思うんですよ。

紫原

なるほど!

はあちゅう

インターネットと恋愛の関係でいえば、結局それぞれがインターネットを道具としてどううまくつかっていけるかってことだと思います。
たとえば私みたいな存在は、インターネットにだいぶ下駄をはかせてもらっているんですよ。現実の戦闘能力にネットが加点されて、総合得点があがっている状態。じゃなきゃ、普通だったら私なんかじゃ会えないような人が、フォロワーが多いっていうだけで会ってくれたり、フォローし返したりしてくれないですから。
ネットを活用していい恋愛をしようっていう流れは、今後どんどん加速していくと思いますね。