好きな仕事をしている人は幸せだ、とよく言われる。でも、例えその仕事自体が好きじゃなくても、「その仕事をしている自分が好き」ならば毎日楽しいのかもしれない。そんなことを感じさせてくれる出会いがあった。
普通と少し違う人生を走るアンダー25を追う「12人のイナセなわたしたち」、第6回の今回は、看護師3年目のハルコちゃんに話を聞いた。
ハルコ、23歳看護師の場合
「今までの人たちみたいに面白い話なんて出来ないですよー」と照れながら、自宅に案内してくれたハルコちゃん。
23歳の女の子の部屋、と聞いてイメージするようなキャピキャピ感とは程遠く、そこは機能性重視の新築マンションだった。
必要最低限の家具とダイエット器具以外は全て綺麗に収納されている。
クローゼットを開けると、黒や茶色といった落ち着いた洋服たちの横に、医療関係の専門書と聴診器が入っていた。
私たちを前にしても緊張する素振りは見せず、軽快な相槌を打ってくれる。
今までの子たちがどこかしら気を遣わせるオーラを放っていたとすれば、ハルコちゃんは、一緒にいて「落ち着く」ムードをまとっていた。
出してくれたお茶を飲み干し、早々に飲み屋へと移動した。
他に道がなかったから、看護師を目指した
「地震があったら山に飲み込まれそうなほどのど田舎で生まれ、ひと学年11人の小学校で育ちました」
四国の山奥で、共働きの両親と4歳下の弟とともに育ったハルコちゃん。裕福ではないながらも、家族の時間を大事にする家庭だったという。
「父親の影響でカーレースが大好きで、だから小さい頃は整備士になりたかったですね」
そんなハルコちゃんが看護師を目指したのは、実は、全く彼女の意思では無かった。それは、中学生の途中で不登校になったことに起因する。
「中学になってひと学年80人の環境になり、うまく立ち振る舞えなかったんですね。それでいじめにあって、学校に行けなくなっちゃって」
最初は怒っていた両親も、時が経つにつれ受け入れてくれた。しかし、高校進学の段になり問題が発生する。地元の高校は、同級生たちがそのまま進学するという。また不登校になるだけだと思った。
「違う学校に行かせてもらうためには、親が納得する理由が必要だった。それが、看護学校だったんです」
ハルコちゃんは、同級生から逃げるために、看護師を目指すことになった。
「片道2時間かかるし、バスの本数は少なくて部活もできないし、勉強も大変だし。でも、なにくそ! と思って通い続けてましたね」
その頃のハルコちゃんの原動力は、中学の同級生たちを見返したいという思いだった。
「中学の同級生に“今何やってんの?”って聞かれた時に、自信を持って答えられる私で居たかった。中学をまともに通えなくてもちゃんと人生歩めるんだ!って、見返したかった。これ以上、人生を休みたくなかったんです」
そんな思いで学校に通い続けた。するといつのまにか楽しくなり、5年間の高等専門学校教育を走り抜け、国家試験にも合格し、20歳にして人の命を預かる仕事に就いた。