自分と同レベルを求めること

 例えばカナコさんは「部屋の掃除をしてくれない」と言います。カナコさんは1日1回掃除機をかけるマメな性格で、家の絨毯は髪の毛1つ見つからないようコロコロを回しています。いわく、お母さまもそういう方でご実家はいつもピカピカだったらしい。

 それは大したことです。でも自分と同レベルの掃除を旦那さんへ求めていいわけではない。旦那さんのようすを聞くと「帰って脱いだワイシャツを床へ放りっぱなし。翌朝まで洗濯機に入れてくれないからいつもその前に私が洗ってる」「ご飯を食べたあとの食器、洗ってって言うと『分かった』って平気で翌日までほっといてる」と……夏場は魚料理なんか腐るんで勘弁してほしいけれど、いたって普通の家事具合です。と申しますか、私も原稿が詰まってるときはこんなもんです(小声)

 カナコさんはご自身が潔癖だから、彼がその程度しか家事をやってくれないことを許せない。それは構わないけれど相手が自分と同レベルになってくれる、ましてや自分が手取足取り教えもせず成長してくれるだろうと期待するのは厳しすぎます。会社で新卒にそんな指導をしたらウツになっちゃいますって。

 しかも往々にして「実家と同じレベルの家事をやってほしい」と引き合いに出される実家のお母さまは専業主婦だったりします。そうねー、そりゃ絨毯に髪の毛が1本もなけりゃ嬉しいですけどね、それって共働きだとかなりしんどいですよね。

完璧ではなく「許せる家事」を目安に

 もちろん「家事離婚」を決めちゃった方がいいケースもあります。夫が家事分担を全くせず、ましてや自分を責めてくる場合。話し合いをしようと呼び掛けても無視される。外で「こいつ家事しないんだよ」とディスられる。この辺はもう、家事云々より話し合いの姿勢の問題です。家事ごときで話し合いができぬ人と、子育てや老後の話をするのはムリ、ムリムリ別れていい。

 その一方で、もし無意識に「完璧な実家」や「ベストコンディションの自分」を引き合いに出して彼を責めたくなっているなら……比較対象を見直すいい機会なのかもしれません。これからの世代は、ほとんどが共働き。完璧な家事より、許せる家事レベルを目指しませんか。

Text/トイアンナ
From/TOFUFU

次回は<不調は男女平等に訪れる。夫に「会社辞めてもいいよ」と言うために>です。
「夫婦の関係とは何か」、と聞かれたら答えは人によって違うと思いますが、やっぱり支えあうことは大事ですよね。精神的にも、体力的にも、そしてできれば経済的にも。トイアンナさんのように万が一相手に何かあったら自分が…!という備えも、相手を想えば若いうちから考えるべき大切なビジョンなのではないでしょうか。