スピリチュアルなことに一切興味がなくなった、「〇〇の母」との出来事

スプリチュアルに興味がなくなった一件

占いに頼る女性の画像 Oleg Magni

人から与えられた痛みには敏感であるのに、知らず知らずのうちに、人に痛みを与えていることは、まったく気が付かないでいる。そういうことってありますよね。
そう、あるって知っていたんです。頭では理解していた。けれど、世の中にまさか、わたしが女性器のことを「マ〇コ」と呼ぶことで、傷つく女性がいるとは、まさか想像もしていなかったのです。

あれは数年前のことでした。38歳の誕生日を迎えたわたしは、目前に迫る40代に向けて、なにか新しいことを始めようと考えました。どうせだったら苦手で今まで避けてきたことがいいと思い、富士山に登る、ランサークルに入る、ヨガを始める、などを考えたのですが、どれもまったく気が乗らない。
せっかくポジティブな決意を固めた次の瞬間に「無理……」となったことを情けなく思いながら、「どうせだったら、仕事に活かせることのほうがいいよね!」と、すぐさま自己肯定力を発動して正当化し、フィジカルではなくメンタル面での苦手科目はなんだろうと考えた。そこで思いついたのが、スピリチュアルです。

スピリチュアル。かつて少女の頃は占い雑誌を毎月買って読みふけったり、『ルネ・ヴァン・ダール』の占いテレフォンで恋の悩みを相談したりしていました。社会人になってからも、一時期は石井ゆかりさんの占いを毎週チェックしていたし、なんならネイティブアメリカンの聖地であり、ヒーラーが多く住むアメリカのアリゾナ州セドナを旅したこともある。
けれどいつしか、まったく興味はなくなってしまいました。そのキッカケは、当時付き合っていたフリーライターの男性の覆面取材に付き合って、「〇〇の母」(仮名)と呼ばれている占い師に見てもらったことでした。

「〇〇の母」はわたしが生まれ育った街の占い師で、雑誌に取り上げられたり、テレビで紹介されていたこともあり、そこそこの知名度があるものの、とにかく辛口であるというので有名でした。
説教されてビンタまでされるという評判もあり、「いつかは行ってみたいなぁ」と思いながらも、なんとなく二の足を踏んだまま、成人して、わたしはその街を出てしまったのです。ところが、そのフリーライターの恋人と同棲をすることになり、わたしの実家へと挨拶に行くついでに、恋人が「有名な占い師の店があるよね。そこに潜入して、ルポを書きたいんだけど」と提案されたのです。

そして迎えた当日。わたしの親に同棲の挨拶をするために、待ち合わせの場所に訪れた恋人は、なぜか頭の毛が真っ金色になっていました。もともと毛先だけ金髪だったのですが、「ご両親に挨拶するのに、まだらは失礼だから」と床屋に行って染めてきたと。
失礼だから? いや、お前、むしろ威嚇するつもりだろ……と心の中で突っ込みつつも、両親に会わせて無事に同棲の許しを得た後、あらかじめ整理券をもらっておいた、「〇〇の母」の店へと行ったのです。