「そこの席、人が来るんで」公園で嘘をつく女性に夫が感じたこと

独身時代、恋人に求める条件は「好きな人であること」でした。好きでさえあれば、少々性格が合わずとも、食やセックスの好みが違っても、金銭的感覚が食い違っても、考え方が相容れなくても、なんとかなると思っていた。けれど、いざ「好きな人」と付き合い出しても、一緒にいて楽しい時間よりも、ストレスを感じているときのほうが長く、いつも喧嘩ばかり。なんのために付き合っているのかわからない状態になることもままあって、当時は「好きなのに、なぜ上手くいかないんだろう……」と深刻に思っていたけれど、いまならわかる。価値観の合わない相手と一緒に過ごすのは、なかなかに困難なことだと。

公園に家族で出掛けたときの話

先日、家族で公園に遊びに出掛けたときのことでした。秋晴れの過ごしやすい日ということもあってか、多くの子連れ家族で公園内は大賑わい。遊具には子どもたちがわらわらとたかり、親たちはベンチにすし詰め……とまではいかないまでも、探さなくては見つからない程度には座れるスペースがない状態でした。

さっそく遊具に向かって駆け出した我が家の5歳児&夫を目の端で捉えつつ、どこか腰掛ける場所はないかと探したところ、テーブルとセットになっていて、片側3~4人ほど掛けられるベンチが空いているのが目に入りました。テーブルを挟んだ向こう側には、ベビーカーを携えた女性がひとり座ってはいるけれど、テーブルに背中を向ける形です。

このご時世、相席は嫌がられるかもしれないけれども、向こうが背を向けている以上、互いにテーブルを囲むかたちになるわけではないし、テーブル幅は大きくて十分に距離は取れているし、野外だし、公共の場所だし、座ってもいいだろうと判断。はす向かいの対角線上に腰を降ろして、売店で買ったアイスコーヒーを飲んでいると夫がやってきて、わたしの横に腰を降ろしました。さらに息子も駆け戻ってきて、テーブルを挟んだ向こう側から「ママ、俺にもそれを飲ませろ」という。「これアイスコーヒーだから苦いよ!」と答えたところで、つかの間、うちの息子と並ぶ形になった女性が「すみません、そこ、人が来るんで」と注意をしてきた。

無神経に騒いでしまった感があるので、「すみません!」とすぐに謝って息子をこちらに手招きし、一口だけコーヒーの味見をさせると、納得したのか息子は、またすぐに遊具へと。夫も「一緒に遊んでくる」と立ち上がって去っていった。

ひとり残されたわたしは暇つぶしにスマホを取り出してSNSなどをチェックしたら、女性はこちらに向き直り、なぜかわたしをチラチラと見つめながら、同じくスマホを触りだしました。なんとなく感じ悪い雰囲気のまま、10分ほど経過したところで、女性が意を決したかのように「あの、そこの席、取ってあったんです」と話しかけてきました。「えっ! 全部ですか?」と尋ねると「ええ、お友達の家族も来るので」と。

そう言われては仕方がない。どいてくれと言われて居座る理由もないので腰をあげて離れつつも、以後、「いつ、お友達の家族は来るのかしら?」とチラチラと伺っていたところ、配偶者らしき男性は訪れたものの、それ以外、誰とも合流することのないままで、結局帰っていってしまいました。