夫婦別姓なら面倒じゃない

 手続きを進めるうちに、それまであまり頭になかった「夫婦別姓」という言葉がちらりと頭に浮かびました。もちろん、どちらの姓にするかは本人たちが決めることで、わたしの姓を選ぶという手もある。けれども、女性が男性姓を名乗ることが当然とされているいまの日本で、「面倒くさい手続きを、女だけがするのは不公平だ」という理由で女性側の姓を選ぶことは、世間の反応を考えるとなかなかパワーが要りそうです。

 世間の声なんてなにひとつ気にすることはないのですが、それでも毎度毎度、「なんで女性側の姓にしたの?」と尋ねられることは確実で、その度に説明をしないといけないって、結構な煩わしさだと思います。煩わしさを忌避するための選択はまた別の煩わしさを生むのです。

 しかも、結婚であれば、まだ「彼と同じ苗字になる」というモチベ―ションを持つこともできますが、離婚して再び姓を変えることになった場合には、なにをモチベーションにすればいいのか。相手のことが大嫌いになったならば、「彼の苗字で呼ばれたくない」ってこととか? もしもまだ未練がある場合には、つらい作業になりそうです。

 そういえば、わたしの友人に、離婚の際に旧姓に戻さずに、そのまま結婚時の姓を使い続けた女性がいました。婚姻期間中、職場で夫側の姓を名乗っていたことがその理由で、各種名義変更の手続きはもちろん、いちいち仕事先の人に名前が変わったことを説明する手間は省けたものの、困ったのは再婚の時。

 相手の男性は、職場の人の紹介で知り合ったため、当時の彼女の姓が、実は元夫のものだとは知らなかったのです。彼女のほうも、バツイチとは最初から伝えていたものの、「実は元夫の姓をそのまま名乗っている」だなんて、まるで未練があるようで伝えておらず、「今度、実家に挨拶に来る時に表札を見られたらバレちゃうかも……」と焦っていましたが、そもそも別姓が選べるようになれば、こういうこともない。

 では、2012年の入籍時、仮に夫婦別姓を選択できたとして、わたしはどうしていたでしょう。名義変更の煩わしさには目をつむり、同じ苗字で呼ばれる喜びを優先して、彼の姓を名乗ることを選ぶのか、それとも、女性ばかりに負担がかかるこの風潮にアンチの姿勢を見せるべく、自分の姓のままでいるのか。

 どちらにしても、「選べる」ということが重要に思えます。さて皆さまは、夫婦別姓が選択できるようになったら、どうしますか? 

Text/大泉りか

次回は <義実家という「よその家庭」が私の「生まれ育った家庭」の呪いを解くかもしれない>です。
結婚相手は選べても、義両親までは選べないもの。結婚のトラブルといえば、嫁姑問題が多いですよね。大泉りかさんが初めてパートナーの実家を訪ねたのは交際直後。ノーアポ&初宿泊までしてしまい、学んだこととは。