モラハラ夫を育てない家事のルール

価値観も生活も合わない上に、条件も最悪な前の恋人と、「好き」という気持ちだけで一緒に暮らし始めた時、わたしが家事のほとんどを担うことになりました。「早朝から夜遅くまで外で働いている彼よりも、在宅仕事のわたしのほうが時間がある」という理由です。

しかし、最初こそ「手作りのご飯が食べられるのが嬉しい」と感謝していた彼でしたが、次第に「魚はおかずにならない」「豚肉のカレーはバカにされてる気分になる」などと、食事のメニューに文句を言ったり、雨が降って洗濯物が乾いていないと「えー、明日、どうすればいいの?」とため息をついたりするようになりました。

「嫌なら食べるな」「そこに乾燥機があるから、自分で乾かせば?」と言えなかったのは、家の中を嫌な雰囲気にしたくなかったからですが、いま思えば、それはまったく良くない対応の仕方でした。なぜならば、そうしているうちに、わたしが彼の世話をすることが当然のことになり、彼はますます何もしなくなっていったからです。

気が付けば、出勤前に牛丼の具を鍋につくり、ご飯も研いで炊飯器にセットしてから出かけ、締め切り前で朝まで働いて始発で帰ってそのまま、彼が食べ散らかした食器を洗い、現場に持っていくお弁当を作ったりもしていました。

そのすべての理由が、「彼に好かれたい」ならばまだマシだったと思います。最悪なことに、わたしのその行動の原動力は、「彼の機嫌を悪くしたくない」という思いでした。

その時はまったく気づいていなかったけれど、これがどんどん彼のモラハラ気質を増長させてしまっていた。その反省を踏まえて、新しい恋人と一緒に暮らし始める時に、いくつか自分の中でルールを作りました。

ひとつめ、わたしにとって料理は趣味なので、基本的には担当するけど、自分が食べないご飯は作らない。ふたつめ、洗濯はふたりで協力する。みっつめ、掃除は気が向いた時にしかしない。要は「相手のためだけに家事をする」ことを基本的にやめたのです。

裏返して出された洗濯物はそのまま洗ってそのまま干すし、タンスにも仕舞わない。彼のスペースがどんどん汚れていっても手は出さない。もしもそれに、彼がひとつでも文句を言うようならば、結婚はない――こうして、彼が結婚してもいい相手かどうかを見極める時期として、同棲生活がスタートしたのでした。

――次週へ続く

Text/大泉りか

次回は <わたしの自己実現の証「大泉りか」で名前を呼んでくれる夫>です。
2009年にできた新しい恋人は、大泉りかさんを「りかちゃん」と呼ぶ人でした。でも、「大泉りか」はペンネーム。恋人にぐらい本名で呼んでほしいという気持ちと、自己実現の証であるペンネームへの誇りの間を気持ちが揺れ動きます。