パートナー選びは「あなたに優しい人」よりも「人として優しい人」

恋人に求める条件は「優しい人」?

赤ちゃんに優しく接する人の画像 Joshua Reddekopp

「恋人にするなら『優しい人』がいい」なんてよく言われていますが、それに反論を唱えるかたちで、こんな例を出した人がいました。

「じゃあ、もしもデート中に困っている老人を見かけた時、あなたとのデートを中止してでも、その老人を助ける人がいいの? 嫌? じゃああなたが求めているのは『人として優しい人』ではなく『あなたに優しい人』ってことだね」

なんとも意地の悪い返しです。「わたしに優しい人」が好きで、いったい何が悪いのか。誰だって自分が一番可愛い。

しかしだからこそ、他人に当たり前のように優しくできる人は、とても貴重です。そんなことを思ったのは、先日のある朝のことでした。

どこからか子どもの泣く声

朝、保育園に息子を送って、自転車で帰る途中、どこからか子どもがむせび泣く声が聞こえてきました。声のする方へ向かうと、双子用ベビーカーの片方のシートに、1歳8か月のわたしの息子とちょうど同じくらいの女の子が乗っていました。

泣き声の主は彼女でした。ベビーカーのそばの雑居ビルを見ると、保育園が入っています。「双子ちゃんを保育園に連れてきたものの、片割れがベビーカーから降りたくないとぐずったので、やむを得ず、ここに置いていかれたのだろう」と瞬間的に考えました。ぐずる1歳8か月を2人抱えて狭い階段を上るのが至難の業であることは、容易に想像がつきます。

ワンオペで双子育児に奮闘する見ず知らずのママ(もしくはパパ)と、しかたなく置いてけぼりを食らうことになってしまった女の子の状況を気の毒に思いながら、わたしは一旦、通りすぎようとしました。しかし、彼女の泣き声には、あまりに悲壮感が満ちていました。