僕は「恋人ならお互いの好きな寿司ネタを知らなければならない」と思っていた/服部恵典

 終わった恋の足跡を辿る、忘恋会2017。
今年の締めくくりにふさわしい恋愛納めコラムを厳選してお届けします。
今年に一旦けじめをつけて、来る2018年の新しい恋に備えましょう。

 忘れたい恋の話を書けという。僕には、忘れてしまったことを忘れたい恋の話がある。
 

恋人の好きな寿司ネタを知らなければならない

女性がにぎり寿司を写真に撮っている画像 j

 僕、服部恵典は、大学院に入ってまでAVの研究をするほどオナニー体質だが、恋愛体質ではない。数年に一度誰かを好きになっても、37.1℃ぐらいの微熱を引きずるだけで、環境の変化で会えなくなったらまた35.5℃ぐらいまで下がる。そんなこんなで気づいたら24歳だが、人を好きになったことなんて、小中高で1回ずつと大学で2回……あるかどうかぐらいしかない。

 中学生のときに好きな人とCrystal Kay「こんなに近くで…」の歌詞を2人で引用しながらメールを送り合っていた話や、高校生のときに好きだった人の初めて話しかけてくれた言葉が「ユダヤジョーク言ってよ。あ、ロシアンジョークでもいいよ」だった話はこれ以上膨らまないので、大学生のときの話をしたいと思う。

 これまでの人生で唯一、大学2年生の4か月間だけ彼女がいた。
そして当時の僕は、「付き合う2人はお互いの好きな寿司ネタを知らなければならない」と思っていた。

大学2年生の初夏

 大学2年生、20歳の初夏。いくらにぶい僕でもわかるぐらい、アプローチをかけてくれる後輩がいた。僕ももう、「付き合うなんて面倒くさい」なんて食わず嫌いを言い続けるわけにはいかないんじゃないか、と思い始めてきたときだった。

 たしか2回ぐらいデートして、3回目のデートのとき、江の島のレストランのテラス席で、僕から告白した。好きだったからだ。6月の海辺はまだ肌寒かった。月の地球への最接近と満月が重なるスーパームーンの日だったけれど、空は曇っていた。