真のいい女とは?人間不信なイケメンは“特技”がある女を好きになる『高台家の人々』

 少女マンガに登場するステキな王子様に胸をときめかせていたあの頃——いつか自分も恋をしたい。そんな風に思いながら、イイ男とは何か、どんなモテテクが効果的なのか、少女マンガを使ってお勉強していたという人も少なくないハズ。

 時は流れ大人になっても、少女マンガによって植え付けられた恋愛観や理想の王子様像は、そう簡単に劣化するものではありません。むしろ王子様の亡霊に取り憑かれて、リアルな恋愛がしょぼく思える人もいたり? この連載では、新旧さまざまなマンガを読みながら、少女マンガにおける王子様像について考えていきます。

王道ストーリなのに、とにかくユニーク!『高台家の人々』

 『高台家の人々』は、冴えないOLとイケメンエリート社員がひょんなことからカップルになる、という王道ストーリーですが、その中身はとてもユニーク。自分には恋愛なんて関係ないと思っていたヒロインが王子様に見初められるきっかけが、すごく性格がいいとか、陰ながら努力しているとかじゃなく、「妄想が得意だから」なんです。

 本作の王子様で、名門・高台家の長男である「光正」は、イギリス人の祖母から人の心が読める超能力「テレパス」を受け継いだエリートサラリーマン。彼の兄弟である「茂子」と「和正」もまた、テレパスの持ち主ですが、普段はそれを隠して生活しています。まあ、正直に言ったところで信じてもらえないか、気持ち悪がられるだけですからね。

 他人の考えが読めてしまうテレパスの生活は、想像以上にストレスフルなものです。光正は、名家の長男で、日本人離れした顔立ちで、仕事もできるときていますから、金目当て&顔目当ての女がじゃんじゃん寄ってきます。
男たちだって、彼を放っておきません。彼の出世を嫉妬したり、ごまをすっておこうと考えたりしている。そうした思惑がいやでも脳内に流れ込んでくるのですから、ストレスがない方がおかしい。

 人間不信の王子様である光正にとって、ぼんやりOL「木絵」の特技である“くだらない妄想”は、彼の固く閉ざされた心を開け放ってくれるものでした。

 やがて光正と交際を始めた木絵は、光正の実家に招かれ、兄弟たちに会うのですが、「こっ…これは!!/黒髪・碧眼・超美形の高台様が三人も!!/こんな人達が普通の人間であるはずがないっ…/おそらく彼らは千年を生きるバンパイアの一族で/彼らの正体を知ったダッフンヌ神父に狙われて/日本に逃れてきたのだった」……みたいなとんでもない妄想を延々と繰り広げてしまい、それを読めてしまうテレパス三兄弟は笑いをこらえるので必死。しかし、そんな木絵だからこそ、光正たちを癒すことができるのです。