次はホテルに誘うぞ!約10年の時がすっかり彼女を変えていた/中川淳一郎

社会人になってから数年後、公立中学の同級生約20人で飲む機会があった。僕の通った学校は6クラスもあったため、同じクラスになったことがなく、喋ったこともない女性も何人かいた。この会合には、小柄で清楚なおとなしめの女性・浜田さんもいた。彼女も喋ったことがない一人だった。

「こんな美人いたっけ?」と思ったのだが、誰かが持って来てくれた卒業アルバムを見て「確かにいたわ」ということは分かった。だが、当時は短髪でなんとなくモンチッチのような感じで決して美人ではなかった。約10年の時がすっかり彼女を美女に変えていた。僕らの中学は足立区にあり、同級生の多くは地元に残ったが、僕と浜田さんは京王井の頭線沿いに住んでいた。

「ニノミヤ君と喋ったことなかったよね」と彼女は言い、「そうですね」と僕は言った。「別に敬語使わないでいいよ。昔から知っていたわけだし」と言われ、その後はタメ語で二人して喋った。同級生からは「おいおいニノミヤ、浜田さんを独占するなよ」と注意されてしまうほど、我々は会話が弾んだ。

浜田さんと二人で飲みに行き…

翌朝は仕事が早かったので、僕は一次会で切り上げたが、浜田さんとは連絡先を交換し、今度井の頭線のどこかの駅で降りて飲もう、ということになった。結果的にこの日から2週間後、僕達は下北沢の焼き鳥屋で飲むことになった。

僕の行きつけの店のカウンターで並んで座り、焼き鳥を食べながらじっくりと話し合った。幸いなことに、共通の知人が多いだけに会話が途切れることはなく続いた。彼女は小さなデザイン会社で働いていると言っていた。実家に帰ることはあまりないものの、姪がかわいいから時々地元に戻ってるよーと言っていた。

自然と次に会う日程も決まり、以来僕と浜田さんは週に1回会うようになっていた。会うようになってから3ヶ月、その日は竹芝桟橋から船に乗って隅田川を北上し、浅草へ。昼から会うのは初めてだ。船でビールを飲み、浅草ではビアホールや浅草寺へ行くなどした。おっ、初めてのデートじゃないか、とこのとき浜田さんを女性として意識するようになった。

それまでは同級生の一人がたまたま同じ沿線に住んでいるから飲み友達になったという感覚だったのだが、この日は昼から夜までの8時間ほどを一緒に過ごすわけで、ちょっと関係性が変わったような気がした。そしてこの日、初めて我々は手を繋いで歩くのであった。

その2週間後は錦糸町へ行き、下町を色々と散歩した。「やっぱりオレ達は山の手よりこっちのエリアの方が落ち着くね」「そうね。ちょっと空気が違うよね」といったジモティ的会話をした。この日も手は繋いだのだが、結局何もなかった。

しかし、僕は浜田さんから猛烈に色気を感じるようになってしまい、以来彼女の全裸姿を勝手に想像し、オナニーをするようになった。もう完全にスケベモード入りである。そして、次に会う時はホテルに誘うぞ! と決めた。さすがに15週間ぐらい連続で会っているということは、こちらに対してそこそこ好意は持っているだろう。