ヤりたい4人を寝かせてエロ行為を阻止する!温泉旅館での駆け引き/中川淳一郎

海辺の温泉旅館に男女5人ずつ、合計10人で泊まった25歳の夏、宴会終了後は、大部屋で飲み始めたのだが、どことなくそこにいる何人かがムラムラとしているのが分かった。少しずつ距離を縮めながら耳元でコソコソと喋ったり、「やだー!」と嬉しそうに女性が男性の肩を叩いたりするのだ。

あ、これは今晩誰かが何かするかもしれないな……という予感はあった。一方、僕はこの手のコーフンするようなやり取りはその段階では一切なかった。2組4人は「あわよくば今晩、アレに至りたい」という気持ちが出ているのは分かった。しかし、3人は悔しいためその状況を阻止したいと考え、3人は何も気づいていない感じだった。

集団旅行というのはこの手の駆け引きがあるのが面白いのだが、いちゃいちゃしたい2人にしても「お前らさっさと寝ろ! 多分、オレとアケミちゃんはもう気が合った」などと思うものである。

こうなると人間面白いもので、「ヤりたい4人はその他をさっさと寝させる」「阻止したい3人(僕も含む)はその4人をさっさと眠くさせて個別に寝させる」ということを考えるようになる。その他の3人は鈍感なただの呑兵衛である。

かくして急速に酒を飲むペースが上がっていくと、午前1時30分を過ぎたあたりから、続々と潰れてその場で寝ていく。部屋に帰る者もいるが、「相手候補」がこの宴会部屋でグースカ寝ている状態であれば、エロ行為は阻止できるためそれはOKとする、といった空気感になった。

みんなが潰れる中、残ったのは?

こうしていくうちにどんどん潰れていき、最後に残ったのが僕と、23歳の女性・金子さんだった。金子さんは「何も気付いていない感じ」の一人だ。要するに我々2人がもっとも酒に強い2人ということだ。そしてこの日、僕らはあまり喋ってはいなかった。

「いやぁ~、オレら2人になっちゃいましたね、金子さん。まぁ、まだ飲みますか」

周囲には潰れていびきをかくヤツもいる中、我々はしみじみと酒を飲み交わした。

「ニノミヤさんはお仕事なにしてるんですか?」に始まり、互いのこれまでの人生を語った。彼女は今年大学を卒業したばかりで、僕は社会人3年目だった。若手社員としての苦労話などもして2時20分になったあたりで沈黙が訪れた。

約50分喋っているうちに、浴衣の中から時々見える金子さんの胸の谷間に興奮した僕は「ちょっと、金子さん、もう少し浴衣の胸のあたり閉めてくださいよ」と言った。するとなんということだ! 金子さんは「えっ? 見たいんですか?」と言ってきた。となると話は早い。しかし、この部屋で何かするわけにはいかないし、他の部屋も1人で寝ているヤツがいる。さすがに廊下で何かをするわけにもいかない。

そこで「まぁ、酔いざましに海岸にでも行きますか?」と言い、僕らはバスタオルを持って外に出た。もう二人の思いは一緒だった。先程まで他の人間のエロを阻止したいと思っていた僕、何も気付いていなかった金子さんと一戦交えることになった。宿を出た瞬間、手を握り合い、ディープキスをし、海岸の方へ。