瞬間的な安っぽい感想にうんざりしてしまう

 先月、普段あまり連絡を取り合わない友人から連絡が来て、久しぶりに誰かと映画を見に行った。でも、隣に知っている人がいるというだけで、映画に集中することができずになんとなく終わってしまった。
終わった後、居酒屋に行って「あのシーンがどうだった」「この時主人公はこうだったと思う」という話もしたけれど、私が映画を観た後に欲しかったのは、誰かと意見を言い合うということではなかったんだと、この時にやっとわかった。

 相手がいないと映画に行かない人は、誰かとご飯を食べたりコーヒーを飲んだりしながら意見を交換して共有するところまでを含めて、「映画を観る」という行為なんだと思う。
でも、私は映画を観た後すぐに感じたこと、考えていたことを上手く言葉にすることができなくて、「面白かったね」「よかったよね」とか、そういうありきたりな安っぽいことしか言えなくて、うんざりしてしまう。

 この日もそうだった。つまらないことしか言えなくて、私が友人と映画を観や2時間も、私のおかしな感想で無駄になってしまうような気がした。
誰かと一緒にいること、私にはやっぱり向いていないんじゃないかなあ。

私だけが知っている。それだけで、少し高揚する。

 この前も、会社終わりに一人で『20センチュリー・ウーマン』という作品を観に行った。レディースデーだったのに5人くらいしかいない映画館で、退屈な映画(退屈とつまらないは違う)をぼーっと観て、ひとりで帰った。

 あれだけ明るかったのに、暗くなった道を歩きながら、映画の中のシーンをいくつも思い出しつつ帰る。周りは会社帰りの人達ばかりなのに、私だけは、今まで知らなかったこと、見てこなかったものを知っている。それだけで、気分が少しだけ高揚しているのがわかる。

 映画は観る旅行だと思う。私は単純だから、映画を観て、少しの間でも現実を忘れることができるだけで、現実が少しキラキラして見えるし、辛いことや悲しいことがあっても「もう少し頑張ってみようかな」なんて思ってしまうんだよなあ。
ちなみに、好きな映画館は横浜のジャック&ベティ。関内から少し歩いたところにあって、映画を観た後に歩きながら桜木町まで戻るのが好きで、よくひとりで行くんだよね。

Text/あたそ

※2017年6月13日に「SOLO」で掲載しました

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