肉体を解放し貪欲に求めた醜女/『そして俺は途方にくれる』(後編)

官能小説から男目線の“そそる女”を読み解く!

前回に続き、『そして俺は途方にくれる』のヒロイン・絵里子に迫ります。

第9回:渡辺やよい・著『そして俺は途方にくれる』(後編)

二人が求めているものは一致している

そして俺は途方にくれる 渡辺やよい 双葉社 大泉りか 官能小説
by Tiffany Bailey


 ヤリチン以外にセックスが下手くそだ、と言われる存在、それはイケメンです。
これは、イケメンならば、女が勝手に群がってきて、勝手に求めて、勝手に腰を振って勝手に満足してくれる。だから、技巧に走る必要がない、ということに因しているようです。

 その理論からすればセックスが上手いわけはないイケメンのヤリチンそして俺は途方にくれる』の主人公、靖之。彼のセックスはこんな感じです。

「脱げよ」
 と彼が言ったから、いそいそと裸になったのに、彼はわたしのたるんだ身体をうんざりしたように上から下まで眺めると、「取りあえず自分でしてろよ」なんて言う。

  (中略)

 オナニーしながら、いろいろいろいろ考えているうちに、ふいに今の自分がずいぶんみじめで、ぼろぼろ泣けてしまう。泣くとなんだか気持ちが良くておうおうと声を上げて号泣してしまう。さすがに靖之は、眉をしかめて携帯から顔を上げ、どこもかしこもべとべとに濡れているわたしの姿を見て、よっこいしょっと立ち上がり、ジーパンの前だけど開いて、
「仕方ねぇなァ、入れてやるよ、ケツを出せよ」
 わたしは、しゃくりあげながら、四つん這いになってお尻を靖之の方に高々と突きだし、肩をひくひくさせて、待つ。
(そして僕は途方に暮れる P29L1-P30L7)

 わお。やっぱり最悪……。と思いきや、実はこのセックスに満足している絵里子
なぜかというと、絵里子が求めているのは、靖之の愛情ではないからです。