「お見合いパブ」って知ってる?人生に彩りを与えるのは贅沢な無駄

一日は二十四時間。以前はそのほとんどを自分に使えていたのに、子どもが生まれて以来、育児に時間を取られるようになりました。ゆえに日々、効率的に、無駄なく動くことを心掛けています。しかし、効率ばかりを追い求めて無駄を排除してしまうと、それはそれでつまらない。だから、時には敢えて効率を無視するようにもしている。それは例えば、天気のいい夕方、保育園の迎えに自転車ではなく徒歩で行ったり、普段は冷凍で買っている餃子を手作りして包んでみたり。無駄は贅沢なことで、人生に彩りを与えてくれる。そう考えるようになったのは、かつて「お見合いパブ」で起きた、ある出来事が発端にあります。

昔流行った「お見合いパブ」とは?

皆さまは「お見合いパブ」をご存知でしょうか。ちょっと前に流行った相席屋の、その前に流行った出会いカフェの、さらにその前に流行った男女の出会いの場の一種で、通称「おみパブ」。女性客は店内で飲み食い無料、男性客は入場料を支払って店に入り、気に入った女性を見つけたら有料のメッセージカードを購入。職業や年齢、出身地、性格などの自己申告と、簡単なPRを書き込んで店員に託すと、それが女性客の手元に届く。メッセージカードを見た女性客が「話してもいい」と判断したならば、両者ツーショット席に移動。そこで初めて対面して話し、制限時間内に意気投合したら一緒に外に出る、というのがおおよそのシステムとなっています。

お見合いパブは90年代にはすでに存在していて、わたしが初めて足を踏み入れたのは、ティーンの頃。親には友達の家に泊めてもらうと嘘をついて、悪い女友達とともに新宿・歌舞伎町へとくりだし、イケてる男子にナンパされるのを期待して街に佇む、いわゆる「ナンパ待ち」をする前に、無料で腹ごしらえできるスポットとして立ち寄ったのが最初でした。なんと緩い時代であったことよ。

それから何度かタダメシ目当てに足を運んだけれど、当時、知らない男女が出会えるお見合いパブは、売春の温床ともなっていました。が、わたしはそこで知り合った男性からアプローチされても、外に出たことはなかった。それは「どうせ売るなら、相応しい棚で相応しい価格で売りたい」と思っていた――ようするに、女子高生デートクラブという場所で、女子高生というプレミアがついた価格が付けられることを希望していた――からで、お見合いパブでそれをしてしまうと、 “援助交際”ではなく“売春”になってしまってシャレにならないと考えていたからです。売女にもいろいろ思惑がある。

やがてお見合いパブは、その役割を出会いカフェや相席屋に奪われ、どんどんマイナーな存在となっていったと同時に、わたしも「ご飯を食べるためにお見合いパブに行くくらいなら、自分で金払って好きなメシを食う」という気概を持つようになって、すっかり足を運ぶこともなくなってしまったのですが、30代後半、ひょんなキッカケで再び足を踏み入れることになったのです。