久しぶりにお見合いパブに行ってみると

ある晩、新宿の路地裏にある、狭いバーで飲んでいたときのことでした。バーカウンターの中には友人で漫画家のドルショック竹下さんが入っていて、その店のオーナー男性と、友人のAV監督をしている男性とわたしの三人が、カウンターで飲んでいました。その際、ふと話題がお見合いパブの話になり、「いったいどんな有り様になっているのか、今から店を閉めて、ちょっくら覗きに行こうか」ということになったのです。

無論、お見合いパブは男女混合のグループで行く店ではない。なのでわたしとドルショック竹下の女性チームと、オーナーとAV監督の男性チームに分かれてしれっと入店。それぞれ別の席に座り、我々女性チームはどこかの男性客からメッセージカードが届くのを待ち、男性チームは女性客を見繕う……そんな目論見があっさりと外れてしまったのは、広々とした店内には我々四人しかおらず、どれだけ待っても新規の客が入ってこなかったからです。

当時、出会いカフェが全盛期を迎えようとしていた頃でした。ゆえにお見合いパブはすっかりオワコンと化していた。我々女性チームはどうせ無料だからいいけれども、男性チームは、無駄金になってしまって、ちと気の毒ではないか。そんなふうに思っていたところ、なんと彼らからメッセージカードが届いたのです

「え。我々にわざわざ課金を?! 無駄の上塗り!?」と若干、戸惑いつつもツーショットスペースに移動。「どうも、メッセージカード、ありがとうございます……」などとしらじらしく挨拶をして、これからの展開を相談。過疎り過ぎていて、新規客はまったく来る様子もないので、一旦みんなでバーに戻ろうということで合意。一見、意気投合して外出に相成ったというふうを装って、四人で連れだってお見合いパブを出た後「なんで我々をわざわざメッセージカード代を払って指名したのか、バーに戻ろうという相談なら携帯でやり取りできたはず」ということを、尋ねたものの、男性陣からは、なんとなくふんわりとした答えしか返ってこなかったのが、不可解だけれども面白すぎて、未だ忘れることができない。

そのお見合いパブでの一件のお陰で、無駄こそ人生の彩りであると知ることができたのだから、お見合いパブ様々です。が、それにしても気になるのは、なんで彼らはわざわざ金を払って、わたしとドルショック竹下嬢を指名したのかということです。人生に彩りを求めたにしても、ちょっと無駄すぎないか。

Text/大泉りか