作家・嶽本野ばらさんインタビュー

支配されてるふりをして男を支配する女はかっこいい/作家・嶽本野ばらさんインタビュー

「支配されたい」という不思議な欲望、これは一体何なのか。代表作に『下妻物語』『ロリヰタ。』のある「乙女のカリスマ」として有名な小説家、嶽本野ばらさんにお話を伺ってきました。そもそも「支配」とは何なのか?支配・被支配の関係の逆転とは?最新刊『落花生』についても語っていただいています。

「彼に束縛されたい」「オナニーのオカズはレイプ妄想」などなど、実際にされたら嫌なのに(笑)、なぜか抱いてしまう「支配されたい」という欲望。

 私たちはなぜ「支配されたい」と思うのか。
「乙女のカリスマ」として私たち女性の生き様を描き続けている作家、嶽本野ばらさんにお話しをうかがいました。

女性の支配妄想は「支配」じゃない?

支配されたいの正体 嶽本野ばら 落花生

―「支配」って、そもそも何でしょう?

野ばら:「強制的な力」を行使すること。支配そのものは悪いものではありません。「強制的な力」とは「ルール」に置き換えてもいいのだし。従属させられる者がそのルールは不公平過ぎると怒る時、支配は悪になる。
ところが、女性は不利なルールで縛られるのを好む場合がある。その場合、支配・被支配の関係性が逆転する。

―女性がいう支配関係は、本来の支配関係とは違うんですね。

野ばら:陵辱されるのを妄想して楽しむのは、まさに支配・被支配の関係を反転させる現象です。ルールの盲点をついて、逆にルールを取り決めた相手を窮地に追い込む頭脳プレイ。一方的な「支配」を拒絶するのでなく利用する発想ですね。

 僕が考える「支配」妄想は全然違って。
僕が一番興奮するシチュエーションって、僕に何の興味もない、むしろ嫌悪感を抱いている女性のカバンの中に、彼女が知らない間に射精して知らんぷりをする…ってもの。

―一方的で、本来の「支配」に近いですね。なんだか男性的です。

野ばら:僕は、ゲイと間違われますが、性的にはストレートなんですよ(笑)。

支配したいから、支配されたい

支配されたいの正体 嶽本野ばら 落花生

野ばら:性ファンタジーは男性的だけど、女性の思考もよくわかります。

 もうこの年齢だから言ってもいいと思いますが、若い頃はすごくかわいかったんです。幼少期はおかっぱ頭だったし、男の子として見られることはまずなくて。中学高校に進んでも、私服が女性的だったこともあり、やっぱり女性に間違われていました。

 その当時は、ナンパブームで、ナンパして、ディスコとかに連れて行って、その後あわよくば…というのが若者のトレンド。そういう時代に街中に出ていくと、ナンパしようとしている男性の目にさらされるんですよ。

―野ばらさん自身が?

野ばら:そう。歩いていると、たくさんの男性たちが「あの子はヤレるかな?ヤレないかな?」と値踏みしていく。女性が男性を値踏みするときって、容姿だけじゃなくスペックや性格なども加味しますよね。対して、男性は「胸でかい!」「足細い!」などセックスに直結する視線を向けてくる。獣がターゲットを狙うような男性の視線に対する恐怖感や嫌悪感は、女性と同じように感じてきました。

 で、そういう視線にさらされている女性がどうするかというと、結局は居直るんです。

―居直る?

野ばら:性の対象として見てくれてもいい、その視線を逆手にとって生きていってやろう、という居直りです。
今は少し廃れてきましたが、すべての女子たちがアイドルになってやろうとするアイドルブームって、自分が性的対象として見られる状況を逆手にとって、おもしろおかしく楽しんでいこうっていう姿勢だと思うんです。

 つまりは、支配されているふりをして、男たちを支配する。
僕はそういう女性の生き方を、すごくかっこいいと思いますね。