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  • 2012.10.11

第9回: 夏目三久はお茶の間をみっくみくにできるのか?

夏目三久と初音ミクの意外な共通点とは

By chadawg24
©By chadawg24

 夏目三久と、初音ミク。
前者は日テレからフリーへ転身し、『マツコ&有吉の怒り新党』で再びブレイクしている女子アナ。
後者はネットで人気の音声合成&DTMソフトの製品名であり、ボーカロイドとして擬人化されたバーチャルアイドルでもあります。

 名前の響きがよく似ている以外、一見何の共通点もないと思われる両者。
ところが、実はその生い立ちに奇妙な偶然の一致が隠れていることをご存じでしょうか

 夏目三久は、2007年7月30日、『あすの天気』でアナウンサーとしてデビューします。
初音ミクの初版が発売されたのは、奇しくもそのちょうど1か月後。2007年8月31日のことでした。

 夏目は同年10月、わずか入社半年で、昼の帯番組『おもいッきりイイ!! テレビ』にみのもんたのアシスタントとして大抜擢。
初音もまた、同年9月にオリジナル曲「みくみくにしてあげる♪【してやんよ】」が、一時ニコニコ動画の最多再生回数を記録。彼女を歌い手とする楽曲が、ゲームソフトのイメージソングや、テレビ番組のテーマ曲に起用されるまでになります。

 2008年には、日テレ開局55周年を記念して結成したキャンペーンガールユニット「go!go!ガールズ」の一員に夏目が選ばれます。
その活動の一環として、同年7月に『それいけ!アンパンマン 妖精リンリンのひみつ』で声優デビューを果たすと、それを追いかけるように初音は、すぐれたSF作品に贈られる星雲賞の自由部門を8月に受賞。

 さらに、11月にミクが「現代用語の基礎知識2009」に掲載されると、三久は12月「クリスマスは一緒に」で歌手デビュー。
ミクと三久は、ちょうど同じようなペースで、二人三脚ともいえるブレイクを果たしていくのです。

“女子アナのアイドル化”が生んだルサンチマン

 ところが、2009年7月、夏目三久にとあるスキャンダルが流出します。
週刊誌に、ベッドでスキン(男性用避妊具)を持ってほほえむ写真が公開されてしまったのです。
3か月後、彼女が地上波のほとんどの番組を干されてしまったちょうどその頃、ウェブブラウザのGoogle Chromeでは、奇しくも初音ミクをあしらったスキン(外観表示)が公開されました。

 まさに運命共同体、なんという偶然の一致でしょうか。

 思えばボーカロイド・初音ミクは、制作者の入力した譜面の通りに歌い上げるボーカル音源にしかすぎないソフトに、“バーチャルアイドル”というキャラクターを与えることで大ヒットしました。
女子アナもまた、本来は局の用意した原稿や台本の通りに番組を進行する社員だったはずが、過剰に“アイドル”的な役割を背負わされることで、男性人気を獲得してきた存在です。

 しかし、彼女たちはアナウンサロイドではなく、生身の人間です。
アイドル化戦略は、同時に女性からの反感を買うという諸刃の剣でもありました。

 “美人女優”や“美人タレント”は同性からも憧れの的になるのに、“美人女子アナ”だけが同性から異常に敵視され、冷ややかな目で見られます。
それは、彼女たちが本来アナウンサーの職能には関係ないはずの“オンナであること”を売りにしてのし上がってきた=「うまいことやりやがって」という無意識のルサンチマンが働いているからです。

“女子アナは野球選手と結婚しがち”は本当か             

By mathewingram
©By mathewingram

 たとえば、世間が女子アナに対して抱いているイメージのひとつに、「野球選手と結婚しがち」という“あるある”があります。

 ところが、ざっと調べてみたところ、中井美穂と古田敦也、柴田倫世と松坂大輔、木佐彩子と石井一久などを筆頭に、その数はおよそ20組ほど。
それぞれの職業人口と特殊性を考えれば、かなりの数と言えるかもしれませんが、正直「そんなもんか」と思ったのも事実です。
私たちは、女子アナと野球選手が結婚するケースを、実態以上に多いと思い込んでいるのです。

 なぜなら、私たちは心のどこかで「女子アナだから、野球選手と結婚する」のではなく、「野球選手と結婚したがるような自意識の女だから、女子アナみたいな高慢な職業を目指す」と思っているからではないでしょうか。

 女子アナとは、それなりの学歴と知性、そして美貌を兼ね備えているという自覚と自信がなければ目指せない職業です。
ただでさえそんな“意識の高い”女性が、高校時代から野球一筋に生きてきて女に免疫がない世間知らずを手玉に取り、社会的・経済的地位のみならず、男女の関係においても精神的優位に立とうとしている。
その勝ち気で自意識の高い精神に、世間はルサンチマンを抱いています。

 実際、本当にそうかどうかは関係ありません。
ただ、“女子アナは、女を武器にして高収入のバカを手玉に取るような女たちだ”と思い込みたいのです。

 そんな思いを抱える人たちにとって、夏目三久の“スキン公開”スキャンダルは、まさに“ミクがネギしょってやってくる”絶好の餌食だったわけです。
「きちんと避妊をしています」と表明しただけで足元をすくわれた夏目三久は、女子アナアイドル化時代の波に翻弄された犠牲者と言えるかもしれません。

夏目さまブレイクのカギは“無自覚のドSっぷり”

 最近、そんな彼女が復活を遂げたと話題になっています。
きっかけは、バラエティ番組『マツコ&有吉の怒り新党』へのレギュラー出演。
マツコ・デラックスと有吉弘行という、現在最強ともいえる毒舌タレントを1人で相手にする、堂に入ったMCぶりが評価されているのです。

 もともと、資産家の家に生まれたお嬢様だという彼女。
お金持ちの美人に特有の“おっとりしているのに気が強い”性格のためか、マツコと有吉の主張をときにあっさりと否定。
丁寧な言葉遣いとニコニコした態度で、暴力的な屈託のなさを発揮することがあります。

 ある回では、有吉のいないところで「よく人に被害者意識が強すぎるとおっしゃるじゃないですか。あれ、自分ですよね」と彼の本質をえぐるような発言を繰り出すことも……。
おそらく彼女は、根が卑屈なマツコと有吉の抱えるコンプレックスを、あまり意に介していないのでしょう。
ある意味、最強です。

 アナウンサー時代は健康的な色気のある快活な美少女という印象でしたが、復帰後はなにやら妖艶な魅力すら身にまとう陰のある女になりました。
女子アナという身動きのとりづらいアイドルの鎧を脱ぎ捨て、同性から叩かれる理由もなくなったことで、写真流出の一件は彼女のキャリアを傷つけるどころか、美人タレントとしての深みを増す“ハク”になったとすら言えるでしょう。

 ただひとつ残念なのは、マツコや有吉レベルを相手にしたときでないと、まだ彼女の“魔性”が生かせていないということ。
もともと男好きのする正統派美人なのですから、これからはその持ち前の“天然の暴力”と“慇懃無礼なSっぷり”を発揮することで、お茶の間をみっくみくにしてほしいと思います。

Text/Fukusuke Fukuda

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ライタープロフィール

福田フクスケ
フリーライター。“くすぶり男子”の視点から恋愛やジェンダー、セックスなどを考察。

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