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  • 2014.12.05

祝・結婚!恋愛に奥手な弟・向井理が姉・片桐はいりと新しい人生の幕を開ける『小野寺の弟・小野寺の姉』

 人間は簡単に変わらない。同時に、人生も容易く動かせるものじゃない。
世に蔓延る「一歩踏み出して」「勇気を出して」「扉を開けて」ってメッセージソングに応えられない人は多い。

 自分だけが進むのならいい。でも、一人だけの精神ではどうにもならないことだってある。人間関係、金銭問題、家庭環境。それらで一歩も踏み出せず、勇気も出せず、扉を開けることができない人だっている。小野寺家がまさにそれ。
でも、この家の姉と弟は恋をしてしまった。閉まっていたはずのストーリーの扉が、ついに開かれたのです。

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© 2014 『小野寺の弟・小野寺の姉』製作委員会

『怪物くん』『ガチ☆ボーイ』等、数々の人気ドラマ・映画脚本を手がけてきた西田征史がこの度映画監督デビュー。2013年に西田監督によって脚本・演出で上演された同名舞台の映画化です。

 舞台版と同じく、小野寺家の弟・進役を向井理、姉・より子役を片桐はいりが演じます。
一見、「この二人が姉弟!?」ってリアクションになると思います。でも、映画を観るにつれて本当に血が繋がっているんじゃないかと錯覚するほど親和性が高く感じる。

   メガネと寝癖でもやはりかっこいい向井理と、たしかにコケシにしか見えないが仕草がかわいらしい片桐はいり。ある種の異色の組み合わせが妙にマッチしているのです。


恋愛に奥手な姉弟の、優しく強いつながり


 【簡単なあらすじ】
 小野寺家の33歳の進(向井理)と40歳のより子(片桐はいり)は両親を早くに亡くし、二人暮らしを長く続けている。
恋愛に奥手で、過去の恋愛をずっと引きずっている進のもとに一通の郵便が届き、それがきっかけで一人のかわいい女の子と出会う。

 一方、より子も職場のメガネ屋にコンタクトレンズの営業に訪れたサラリーマンと出会う。進とより子はそれぞれ恋をして、今まで動くことのなかった人生が静かに動き始める。
進が秘めたより子への想いと、より子の切実な恋の行方はいかに――?

悪い人が一人も出てこない、温かい人物描写


 いくら殺伐とした気分でも、この映画を前にするとさっぱり忘れてしまいそう。
小野寺家は独特な時間が流れている。幼少期に唐辛子を食わされたり、ヒーローショーでヒーローの中身を教えられたり、サンタクロースがいないことを告げたり。そんな姉の可愛らしいいたずらをいまだに根に持っている弟のナレーションからはじまるのだから、20数年間、時間がほとんど進んでいない。

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© 2014 『小野寺の弟・小野寺の姉』製作委員会

 学校の先生の言い間違いをずっと思い出し笑いするくらい、進とより子のほのぼのとした時間が微笑ましい。その空気は周りにいる友人、同僚にも感染し、全編通じて悪い人が一人も出てこない、安心感たっぷりの物語になっている。

 恐らく、進とより子からしたら「仲が良い」って自覚はないんだろう。それこそが仲が良いって思わせるほど、密接な関係がちょっと羨ましい。
しかし、だからこそ新しい人生に踏み込めずにいるのがもどかしい。二人の恋には、二人の関係性が強く影響してくるから。


恋をして始まるものと、変わるものとは?


 二人だけだった家族が、恋をすることで次第に人数を増やしていく。その分、進とより子の間に変化が生まれていく。
進がなぜ過去の恋愛がトラウマになり、今の新しい恋に躊躇しているのか。その謎が解き明かされる後半が、あまりに切実で辛い。

 進にとってより子は姉であり、母みたいもの。同時に、より子にとって進は弟であり、子どもみたいなもの。
たまに立場は逆転するが、二人は切っても切れない関係。ある意味恋より強い。だから恋愛に奥手な二人は求めるべき幸せを掴めないでいる。

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© 2014 『小野寺の弟・小野寺の姉』製作委員会

 恋をすると人生は始まるが、同時に変わってしまうものがある。
進がより子に秘めた想い、40歳のより子が初めてまともに恋愛をしたその感情が交差する時、物語は劇的に変貌を遂げる。小野寺家の部屋の隅っこに、恋よりも深い愛を見つけてしまうのです。

互いを思いやる姉と弟の感情の交錯


 小野寺家の二人を見て思うことは、観る人それぞれであることは違いないでしょう。
自由気ままに恋をしようとも、守るべき家族がいるなら、進の気持ちが分かる。より子の気持ちが切実に感じられる。そんな中でも幸せを追い求めて、互いを思いやる姉と弟を見ると、それこそ一歩踏み出す勇気を得ることができるかもしれません。


   

新宿ピカデリーほか全国ロードショー

監督・脚本:西田征史
キャスト:向井理、片桐はいり、山本美月、ムロツヨシ、寿美菜子、木場勝己
配給:ショウゲート
2014年/日本映画/114分
URL:映画『小野寺の弟・小野寺の姉』公式サイト

Text/たけうちんぐ

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ライタープロフィール

たけうちんぐ
ライター/映像作家

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