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  • 2016.02.23

ニューレディーとして完走した東京マラソンの思い出

昨年の東京マラソン、実はニクヨさんが参加していました。もちろん女装ランナーとして。東京中の視線に晒されたニクヨさんが体力の限界を迎えたとき、沿道にいる赤の他人から意外な声が届きます。その内容とは?

おマラソンのおもひで

肉乃小路ニクヨ 恋愛 ニューレディー おネエ 淑女
©Extra Zebra

 私は昨年(2015年)の2月、東京マラソンにニューレディーとして
参加して、フルマラソンを完走しました。

 それは40歳になる直前、39歳の冬でした。
前々から、思い出の街「東京」を駆け抜けてみたいという
ミーハーな気持ちもあり、東京マラソンには毎年抽選に応募し続けていました。

 でも本当のことを言うと、これから40歳を迎えるにあたり、
太陽が燦々と照りつける中、東京中の視線に晒されて、
この先、熟年女装として生きていく覚悟を試したかったのと、
装うことができない限界の状態の中で、
私は本当に熟年女装として、この街に居ても良いのかということ

沿道の声援から聞いてみたかったのです。


油断していた当選と大まかな準備

 その割に、大それた準備はしていませんでした。
東京マラソンは人気の大会なので、当たらないだろうという油断も
ありましたし、普段から男性社会に負けないように、
そこそこ運動をしていたので、何とかなるだろうという油断もありました。

 しかし、当たってしまったのです。それも繰り上げ当選でした。
繰り上げ当選は12月に連絡が入ります。
12月は女装も何もかも忙しいので、準備期間は実質2ヶ月でした。

 その間、私もできる限りのことはしました。
足に負担のかからない靴を探し、
筋肉をサポートする下着を探し、
動きやすくてカッコ良いウエアを考えて、
オシャレなポーチ、サングラス、手袋を買いました。
って、全部買い物ですね!

 いや、もちろん、多少は練習もしましたよ。
寒いのを我慢して休日に20km走とかはしました。
あと、ジムもほどほどにちゃんと行っていました。
でもね、冬って寒いんですよ。
歳も歳だし、あんまり、頑張ったら
壊れちゃうので無理はしませんでした。

 大会の前日は東京の街を駆け抜けるので、
江戸の総鎮守の神田明神に挨拶に伺い、
無事を祈り、当日のために早く寝ました。


大会当日の戦い

 当日の朝、早朝にメイクをして受付に向かいます。
途中までお店の同僚のドリューさんに付き合ってもらいましたが、
受付の手前でサヨナラをして、
そこから2時間くらい、スタートまでの時間を一人で迎えました。

 先ずは周囲のランナー達からの視線との戦いが開始です。
ここで「マラソン舐めんな!」とか石をぶつけられるかと覚悟をしましたが、
みんな、笑顔で、「コスプレランナーですか? 凄いですね」という声を
いただきました。
その都度
「これはコスプレではなく、癖(へき)もしくは性(さが)、いや、業(カルマ)です」
と弁解して回る面倒臭い女装ランナーとなっていました。

 スタートしました。
でも、私は一般抽選で、しかもマラソン経験のない初心者なので、最後尾からです。
スタートの9時10分から40分遅れくらいで走り始めましたが、
2時間以上、寒空の下で待っている間、
身体がとても冷えてしまい、スグにトイレに向かって用を足しました。
恥ずかしいわ。

 スタートしても、沿道は私をコスプレランナーだと思ったのか、
応援してくれました。
新宿二丁目の沿道では営業明けの仲間が、わざわざ待ち構えてくれて、
熱心に応援してくれました。
どんなに心強く誇りに思ったでしょう。

 そして、応援の中、私は10km、20kmを順調に過ぎましたが、
折り返し地点に着く頃に足がパッタリ止まりました。
そう、足は正直に練習していた20km過ぎまでは動いてくれましたが、
補助下着の効果も5kmほどで、そこからパッタリと走れなくなりました。
少し歩いては走ってという繰り返しです。
各関門の制限時間も迫ってきます。
体力の限界で、頭もぼーっとしてきます。
そんな時に、
「何だかわけがわからないけど、赤い奴、ガンバレー!」
という声が聞こえてきました。
そう、私は真っ赤なウエアを着て、当日走っていたのです。
この時、私は、よくわからないけど、全力で向かっていれば、
応援してくれる人はいるということを体感しました。


 そして、沿道の視線や声援から、女装でも別にいいよ、という
声が聞こえてきました。
私は朦朧とした意識の中で、
「居て良し」という判定をもらった気がしました。


大いなる自己満足

 結局、後半はほとんど歩いて記録は6時間ちょっとという、
あまり褒められたものではありませんでしたが、
私にはとても価値がある人生の6時間でした。

「もう一回やって!」って言われたら、
高額のギャラを貰わない限り嫌ですが、
挑戦してみて良かったなと、私は思います。

 人生は時折、油断して、無茶をしてみないと
わからないことがあるのです。

あなたも良ければ、体験してみない?

 ふふふ。

Text/肉乃小路ニクヨ

ライタープロフィール

肉乃小路ニクヨ
東京の片隅でひっそり生き続けるちょっぴりしょっぱくてサワーなニューレディー。オーバー40歳、崖っぷち女装

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